『米ロがシリアで平和解決合意というが』

2013年9月15日

 

 ロシアが提案したシリアの化学兵器問題処理案は、非の打ち所がないだけに世界が受け入れ、アメリカも受け入れざるを、得なくなってきているようだ。もし、そのとおりに推移し、シリアが受け入れた化学兵器の国際管理が進めば、シリアに対するアメリカの攻撃は、起こりえないということになろう。

 もし、アメリカがシリアの化学兵器サイトを攻撃すれば、大量のガスが大気中に広がり、多くの犠牲者が出るのではないか、と懸念している。そればかりか、化学兵器の隠匿場所に関する情報が不確かであるために、関係のない場所にまで攻撃が行われることになり、ここでも犠牲者が出よう。

 既に、アメリカの攻撃を恐れて、多くのシリア人が国内や周辺諸国に逃れており、この難民問題も周辺諸国にとって、頭の痛い問題になっている。難民の子供たちが食料に困窮し、餓死者が出ているというニュースも、流れているのだ。

 アメリカは『人道目的』で、『シリア政府が化学兵器を所有することは、許されない』と声高に叫んできたが、ロシアの展開する外交活動によって、シリア攻撃が阻まれようとしている。

そのことは一縷の希望を与えてくれるのだが、全く別の判断をしている人たちもいる、彼らは結局のところ、アメリカがシリアに対する攻撃を断行する、と予測しているのだ。その根拠は次のようなものだ。

1:アサド大統領は化学兵器をあきらめる前に保証を求めている。

2:アサド大統領はアメリカが反政府派に武器供与を止めることを、化学兵器の断念の前に要求している、しかし、アメリカのCIAは反対派に、武器の供与を増やしている。

3:アサド大統領はイスラエルに大量破壊兵器の破棄を要求している、

4;シリアの反政府派はアメリカが軍事介入することを望んでいる。

5:サウジアラビアはアメリカのシリア攻撃を望んでいる。サウジアラビアは既に莫大な資金をシリア問題で投入している。

6:カタールはアメリカのシリア攻撃を望んでいる。カタールはこれまでに莫大な資金をシリア問題に投入している。

7:トルコはアサド体制打倒を臨んでいる。トルコ軍はシリア国境に既に移動している。

8:多くのアメリカ議員がシリア攻撃を望んでいる。

9:オバマ大統領は自身を弱虫と見せたくない。

10:アメリカ軍軍人は既にシリア攻撃準備の指示を受けている。

 この10項目を指摘した人物によれば、現段階でオバマ大統領とケリー国務長官は、平和的解決という名のダンスをして、見せているに過ぎない、ということになる。彼らは外交的解決が失敗した後は、アメリカ議会の承認を得て、堂々とシリア攻撃が可能だ、と判断しているというのだ。

 外交によるシリアの化学兵器問題の解決は不可能であり、結果的に残された手段は、軍事攻撃になるということだ。そして多くのクルーズ・ミサイルが、シリアを攻撃するということのようだ。

 国際政治には『人道』も『正義』も無いのかもしれない。ロシアの平和的解決努力を達成するためには、ロシアによる湾岸諸国攻撃といった、恫喝も必要なのかもしれない、『毒は毒をもって制する』ということか。