シリアで起こっている内戦いついて、一般の人たちはあまりよく分からないでいるだろう。それは当然のことだ。あまりにも内部が混乱し複雑になり、外国からも、介入の手が伸びているのだから。
最初は単純に、アサド体制に不満を抱く人たちが、政府に対する抗議デモを始めた。そのデモに対する弾圧が、政府側によって行われると、大衆側に抵抗闘争グループが誕生する。それを支援する外部勢力が、登場するというパターンだ。
しかし、シリアの場合はサウジアラビア、カタール、トルコといった国々が、本格的に反政府勢力を支援し始めたことが、問題をますます複雑にしていった。シリア人で構成されたFSA(自由シリア軍)には、ふんだんに資金と武器が送られたのだ。
そればかりではなかった。サウジアラビアやカタールは、反政府勢力を支援する目的で、イスラム過激集団の戦闘員を、シリアに送り込んだのだ。しかも、ジハード(聖戦)には出稼ぎ的な形で、ジハーデスト(聖戦の兵士)が集められ、シリアに送り込まれたのだ。
加えて、ヨーロッパからも殺人を趣味とする、残虐な冒険男たちがシリアの戦線に、参加してきた。彼らは殺人が趣味であり、それが給与を貰えるとあっては、たまらないものとなっているのであろう。
外国から来たジハーデストと呼ばれる戦闘員たちは、シリア人を殺害することを喜びとして、いままで残虐な殺人の光景を、携帯電話などで撮影し、一般に公開している.シリア軍兵士を多数殺害するシーン、シリア軍兵士の遺体から内臓を取り出して食べるジハーデスト、キリスト教の司祭と彼の従者の首を、切り落とすシーンなど、が一般に出回った。
こうなると、当初アサド政権に抗議して立ち上がった、シリア人のFSA(自由シリア軍)のメンバーは、外国勢に嫌悪感を抱き始めていよう。しかも、外国勢はシリアをイスラム国家にする、といきまいているのだ。外国から来たジハーデストたちは、シリア国民の意思など、全く考慮していないのだ。
そして始まったであろう、シリア政府とFSA(自由シリア軍)との秘密交渉に、外国から来たジハーデストたちが怒り、ついにはシリア反政府勢力の殺害を叫び始めている。
この悲惨な出来事はいま、最終段階にたどり着き始めているのかもしれない。シリア軍とFSA(自由シリア軍)とが、一体となって外国から来たジハーデストを、シリア領土から一掃する方向に向かうのではないか。そして、それと同時進行の形で、シリア政府と反政府側の交渉が、始まるのではないかと思われる。
そうあって欲しいものだ。シリアの内戦は何も生み出さず、ただ多数の犠牲者と難民を、増やしているに過ぎないのだから。賢いシリア国民は政府側も反政府側も、そろそろ内戦の馬鹿らしさを認識し、外国の介入を拒否する段階に、たどり着きつつあるのだろう。