『露提案で米のシリア攻撃可能性低下』

2013年9月10日

 ロシア政府がシリアの化学兵器に関して、重要な提案を行った。それはシリア政府に対し、化学兵器を国際管理下に置くというものだ。この提案に対し、シリア政府は前向きに捉えているようで、実現の可能性が見えてきている。

 アメリカもこのロシアの提案を、好意的にとらえて、考慮の余地があることを公表している。それは、アメリカ国内でシリアに対する軍事攻撃に、アメリカ国民の63パーセントが反対している、という国内的な事情もあるだろう。

 ケリー国務長官もアメリカが最終的に、シリアに対して軍事攻撃をするか否かについては、明言を避けている。つまり、シリアが化学兵器を使用して、自国民を殺害したということが、国際的に認められれば対応を考えるが、そうでなければ考えないこともありうる、ということであろう。

 そうしたアメリカア国内で、未だにシリア攻撃を主張し、ロビー活動をしているのは、在米ユダヤ団体だが、どうもイスラエル国内とは、反応が異なるようだ。イスラエルからは、イスラエルにとって最も危険な国は、イランであってシリアではない、という意見が出始めているのだ。

  トルコの反応も変わってきている。これまでトルコのエルドアン首相は、絶対にシリアのアサド体制を打倒すべきだ、と叫んでいたのだが、ここにきてトーン・ダウンしているように感じられる。

トルコのエルドアン首相は軍事攻撃が起こった場合、どのような協力をするかまだ決めていない、と言い出したのだ。トルコはアメリカ軍がシリア攻撃をするとすれば、レーダー基地としても、空爆の空軍基地としても、陸軍のシリア侵攻でも、幾らでも協力の道はあるのにだ。

アメリカがシリア対応で、穏健になってきたのは、自国の台所事情が相当悪化しており、戦争などやっていられない、ということに加え、ロシアのプーチン大統領の、シリアに対する影響力の強さと、国際的に常識的な提案をしたことに、よるのではないか。

また、アメリカがシリアに軍事攻撃をかけた場合、ロシアがアメリカに対し、何らかの報復行動に出る危険性も、高まってきたからであろう。ロシアはいま東地中海海域に軍艦を移動させているし、シリアに最新のミサイルを、提供しつつあるとも言われているからだ。

こうした中で、シリアが化学兵器の国際管理提案に反対するとすれば、イスラエルが同じ条件を飲むか飲まないかに、かかっているのではないか。もしイスラエルがこの提案を拒否すれば、イスラエルの国際的な立場は、不利になっていこう。