シリアで内戦が始まってから、既に2年以上の歳月が経過している。その間には幾つもの悲劇が起こっている。爆弾や銃弾で家族を失った人たちの数は、数え切れまい。
そのため、200万人を超えるシリア難民が、いまシリアの周辺諸国で暮らしている。トルコ、イラク、ヨルダン、レバノンといった国々が、その中心をなしているが、これら以外にエジプトやその他のアラブ諸国に、難民として移り住んだ人たちもいる。
ヨーロッパにもシリア難民が到達したが、スエーデンは無条件で受け入れることを発表した。まさに人道的な措置と言えよう。しかし、それはあくまでも例外であり、すべてのヨーロッパがそうした対応を、しているわけではないし、兄弟国のアラブ諸国も、その限りではない。
エジプトでは第二革命後という混乱から、自国の事情もあろうが、一時期シリア人に対し、ビザの要求をしたことがあった。アラブの中の豊かな湾岸諸国が、多数のシリア人を受け入れた、という話は何処からも聞こえてこない。
トルコやエジプトに難民として流入したシリア人は、基本的にはそこに永住する気持ちが、強いのかも知れない。以前、トルコでレストランを始めたというシリア人男性が、インタビューに答えている記事を、読んだことがある。
レバノンの場合は出入国が、他の周辺諸国に比べ、楽なのかもしれない。レバノンに移り住んだシリア難民は、一時的な避難先と考えている人が、多いと伝えられている。
短期滞在か長期か、あるいは移住かは別にして、問題はこれら難民のなかに、多数の子供たちが含まれているということだ。子供たちは今、父親や兄弟の生存確認が、出来ないケースが多いようだが、それ以外にも、大きな問題に直面している。それは教育を受けられない状態に、置かれているということだ。
シリア国内では3000もの学校が、攻撃を受けて破壊され、それ以外にも、難民が学校に住み着いたために、学校としての機能を果たせなくなっている。シリア国内には300万人の子供たちが、教育を受けられない状態にあり、周辺諸国にも、100万人を超える子供たちが、教育を受けられないでいるということだ。
シリア人はアラブ人の中にあって、きわめて優秀な人種といわれてきていた。シリア人の多くは国外に出て、事業に成功してもいる。その彼らの財産は教育であろう。それが奪われるということは、シリアの将来を暗くするばかりではなく、アラブ全体にとっても大きなマイナスとなろう。アメリカが攻撃を加えれば、状況はますます悪化するということは、間違いあるまい。