『オバマのシリア対応に困惑する関係諸国』

2013年9月 3日

 アメリカがシリアに対し、化学兵器を使用して自国民を、大量虐殺したと言い出し、この非人道的な行為を止めるために、軍事行動を採るということを決定した。

 しかし、その後のオバマ大統領の発言は、次第に攻撃時期の延期と、攻撃規模の縮小になっている。攻撃は空爆だけとし、陸上部隊は投入しない。空爆は2~3日で終わらせる、といった内容になっているのだ。

 加えて、国連やアメリカ議会の反応を見るとも言いだし、攻撃時期は2週間先か、あるいはそれよりも遅い時期になりそうだ。シリアという国が地球上から逃げるわけではないので、それでもいいのかもしれないが、物事には弾みというものがあろう。

 世界中がシリア政府の蛮行()に、激こうしている時期に攻撃を加えれば、アメリカの決断と行動を称賛しようが、時間が経ち過ぎると人々は冷静になり、そこまでする必要があるのか、という疑問がわいてこよう。

今トルコ政府はオバマ大統領の、シリア対応に苦慮している。これまでトルコは、アメリカの意向に全面的に沿って、行動をしてきてりる、シリアの反政府勢力に武器を与え、資金を与える場所はトルコであったし、何十万人というシリアの難民も、受け入れている。

 トルコ政府は当然のことながら、シリアのアサド体制を徹底的に、非難し続けてきてもいる。オバマ大統領の言うように、アメリカがアサド体制打倒を考えず、単に化学兵器その他の兵器を、破壊するに留めるのであれば、今後トルコは極めて危険な状況に、置かれることになろう。

 それはトルコばかりではなく、反シリアを支援するサウジアラビアや、カタールにとっても同じであろう。これらの国々の中で、シリア人やヘズブラ、パレスチナのテロリストが、破壊活動を始めた場合、サウジアラビアもカタールも、対応に苦慮することになろう。

 オバマ大統領に、そのことが分からないわけがない。それでは何故、彼は一気にシリアを攻撃し、アサド体制を打倒しようと思わないのか。

 シリアのアサド体制は世俗派あり、イスラム原理主義ではない。エジプトではムスリム同胞団という、イスラム原理主義組織が政権を握ったが、1年足らずで国民の間から不満が出始め、結局は打倒されることとなっている。

 アサド体制が打倒されれば、その後に出てくるシリアの権力の中枢は、ムスリム同胞団であろう。もしムスリム同胞団が国家を、上手にリードしていけなければ、国内は群雄割拠の複雑な対立構造となろう。