『エジプトがエルドアン首相に噛みつく』

2013年8月27日

 トルコのエルドアン首相は、ムスリム同胞団政権との関係強化を図っていた。それはお互いにイスラム教をベースとする、政権であったことによろう。しかも、モルシー大統領(ムスリム同胞団)はトルコの与党AKPを、手本としてやるような話をしたために、エルドアン首相は完全に、舞い上がったようだ。

 エルドアン首相の音頭取りで、トルコ企業がエジプトに投資を行い、幾つもの工場がアレキサンドリアの近くに設立された。しかし、そのエルドアン首相の吹いたラッパが、今回の第二革命で風前の灯火のように潰えたのだ。

 その腹いせからかエルドアン首相は、エジプトで起こったのは第二革命ではなく、軍によるクーデターだと非難したのだ。そればかりか、このクーデターの後ろには、イスラエルがいるとも主張した。

 クーデターによってムスリム同胞団政権を打倒したことの、証拠も手元にあるとまで語り、イスラエルが関与していたと息巻いた。加えて、エルドアン首相はこの一連のエジプトの政変で、アズハル(イスラム教の世界的な権威)が軍の動きを支援していた、とまで言ってのけたのだ。

 しかし、この一言は完全にエジプト側を激怒させたようだ。エジプト政府のスポークスマンが、ただではおかないと公式の場で語り、アズハル高等学者会議の書記長である、アッバース・ショウマーン博士は『エジプトがイスラエルと取引していることなどない。エルドアン首相はムスリム全体に対して詫びを入れろ』と語っている。

 同じように、エジプトのカソリック教会のトップである、ラフィーク・ジャリーシュ師もエルドアン首相の、シェイク・ル・アズハル(アズハルのトップ)に対す悪口を非難している。

 エジプト外務省スポークスマンの、バドル・アブドルアーテイ大使は、エルドアン首相がエジプトで起こった第二革命を、大衆による革命ではなく、クーデターだと言ったことに、腹を立てている。このエルドアン首相の発言は、今後エジプトとトルコとの関係に、大きく悪影響を及ぼし、トルコはとんでもない代償を、支払うことになろうと語っている。

 こうしたエジプト側の動きを知ってか知らずか、トルコはエジプトの安定化にしかるべき貢献ができる、と言い出している。この安定策はアメリカや欧州諸国、アラブ首長国連邦、カタールなどが関与しているということだが、エジプトはトルコの出しゃばりに腹を立て、素直に受け入れはしないだろう。

 いずれにしろ、エルドアン首相はどうも自分の実力を、過大評価しているようだ。そのつけは決して安くはないだろう。