最初に、ムスリム同胞団のナンバー2である、シャーテル氏や、モルシー前大統領が軍によって拘束された。次いで、ムスリム同胞団の代表バデーウ師も拘束された。この結果、ムスリム同胞団は早急に、次の代表を決めなければならなくなった。
バデーウ師が逮捕されて数時間後、ムスリム同胞団は臨時の代表に、マハムード・イッザ氏(70歳)を選出した。彼はザカジ―ク大学で医学の博士号を取得し、その後同大学の薬学部で、教授として勤務していた。
ザガジーグ大学には彼以外にも、ムスリム同胞団の幹部が教授として、多数勤務していた。例えばモルシー前大統領もその一人だし、来日したイスマイル教授もそうだ。
マハムード・イッザ氏はムスリム同胞団の第2代代表だった、サイド・コトブ師から直接指導を受けていた人物の、一人だと言われている。彼はイギリスにも滞在しているし、宗教学校でも学んでおり、他の幹部たちとは、少し毛色が違う生え抜きなのかもしれない。
組織内部ではバデーウ師シャーテル氏に次ぐ、3番目に位置していたと言われるが、彼の指導力からすると、実質のナンバー1ではなかったのか、と推測する専門家もいる。
マハムード・イッザ氏は逮捕を逃れ、いまガザのハマースの元で、匿われているということのようだ。彼については『ムスリム同胞い団の狐』だという説と『ムスリム同胞団の鷹』だとする説とがあり、いずれにしろ狡猾で、激しい気性の人物だということであろう。
彼が臨時のムスリム同胞団代表になったことにより、エジプト政府と軍に対する、徹底した抵抗闘争が始まるのではないか、と予測されている。彼は言い出したことは確実に、実行するタイプの人物のようだ。
彼は一説によれば、大変な戦略家でもあるらしい。これまで彼の指揮の下に実行された暗殺事件は、枚挙にいとまがない、とエジプトの専門家は述べている。
ムスリム同胞団は権力の座から追われた今、政治的な活動の自由も剥奪される状況にあることから、このままでは完全に地下に潜り、非合法活動を継続していくか、あるいは穏健派、非妥協派、日和見派に分裂していく可能性がある。
そのような状況下で、マハムード・イッザ氏が臨時の代表に選出され、ムスリム同胞団は内部の結束を強め、徹底抗戦に向かっていくのではないかと思われる。軍の弾圧が強まれば強まるほど、ムスリム同胞団は後退していくだろうが、抵抗そのものは、過激さを増していくかもしれない。