『エジプトの混乱に対する各国の反応』

2013年8月16日

  エジプトで起こった流血の大惨事は、600人ほどの死者と、1000人を超える負傷者を出した。送られてくる写真を見ていると、それがいかに悲惨なものであったかが分かる。

  当然ことながら、世界の国々は今回のエジプトの惨劇について、それぞれの立場を明らかにした。アメリカのオバマ大統領は、軍の行動を非難しているし、アメリカとエジプトの軍が行っている、恒例の合同軍事演習を取りやめることを発表した。

  ヨーロッパ諸国も、押し並べてエジプト軍の行動を非難しているが、それは人道的に許せないとするものだ。そこにはどこか手控えた非難、というニュアンスを感じるのだが。

  イランとトルコはエジプト軍の行動を非難したが、トルコのそれに比べ、イランの非難のトーンは、少し低いような気がする。それはイランが新しいエジプト政府との関係を、考慮しているからではないだろうか。他方、トルコ政府は国連安保理に、この問題を持ち込むと息巻いている。

  ムスリム同胞団を支援していたカタールは、述べるまでもなく、軍の行動を非難する側に回った。当然であろう、これまでにカタールがムスリム同胞団に対して行っていた支援は巨額に上るし、長期間に渡ってムスリム同胞団の大幹部である、カルダーウイ師を受け入れてきてもいるのだから。

  今回のエジプト軍の行動を肯定しているのは、イスラエル、アラブ首長国連邦とバハレーンだ。アラブ首長国連邦はムスリム同胞団に対し、早い段階から危険視し、冷たい対応をとってきていた。人口的に小国である同国の中で、ムスリム同胞団が活動を始めれば、たちまちにして国内は混乱する危険性があるのだから、当然であったろう。

  バハレーンについていえば、同国も反体制派に対し軍が鎮圧に動いており、エジプト軍の行動に対し、シンパシーを感じたのであろう。また、実際に反体制運動を抱えている国にしてみれば、人道などといった無責任で軽い言葉には、嫌悪さえ感じているだろう。

  世界の報道にはほとんど乗らないが、ムスリム同胞団が行っている破壊行為、放火、殺人は相当な規模に上っている。婦女子の死傷や、制服を着用した軍人や警察と対峙する一般人の光景は、どうしても一般人に同情心をそそられよう。

  しかし、ムスリム同胞団側には、国家を転覆する意図さえあるのだ。ムスリム同胞団が権力を握った日から、打倒されるまでの間に、何がどう行われてきたのかを、冷静に分析してみる必要があろう。