エジプト軍はカイロの二つの拠点に座り続ける、ムスリム同胞団とその支持者たちに対して、何度か期限を切って解散を要求してきた。しかし、ムスリム同胞団はその場所に、今後も長期的居座る覚悟を、固めているようだ。
この問題で、どうして軍はなかなか、行動を起こさないのか、行動を起こすとすればどうするべきなのか、などを考えてみた。考えて見れば見るほど、軍は行動を起こし難い、ということが分かった。
もし軍が主張しているように、強硬にムスリム同胞団と支持者の、座り込みを止めさせようとすれば、当然の帰結として武力衝突が起こり、流血の大惨事となるだろう。それは欧米を始め、世界中からエジプト軍と政府が、顰蹙を買い非難されることとなろう。
ムスリム同胞団と支持派が座り込みをしている場所を、包囲して兵糧攻めにするということも考えられるが、これももし餓死者でも出ようものなら、世界中から非難されることになろう。
結局のところ、軍は座り込みのグループに対して、何もできないということではないのかと考えてみた。しかし、そのことは軍や政府にとって、本当に不利なことなのだろうか。政府はムスリム同胞団に対し、無条件で交渉をしよう、次の選挙に参加させよう、と唱えていればいいのだ。
他方で、政府は着々と行政を、進めていけばいいのだ。もちろん、ムスリム同胞団と支持者による座り込みが続き、時折テロがあるような状態では、外人観光客の数は増えず、エジプト経済にとって不都合ではあろう。
エジプト政府は8月13日、地方行政長官を指名した。今後の政治日程もほぼ固まっている。そうした状態が進んでいくに従い、ムスリム同胞団が再度権力を握るようなことは起こるまいし、モルシー氏が大統領の座に復帰することもあり得まい。
欧米がそうしたエジプト国内の政治の進行を前に、それを阻止するような動きには出ないだろうと思う。ムスリム同胞団の幹部と話したアメリカの、マケイン議員やグラハム議員らも、モルシー氏の復帰はないと断言しているのだ。
つい昨日、エジプトのファハミー外相は『ムスリム同胞団は何時までも、座り込みを続けることはできない。』と語り、政府や軍は強硬手段を講じて、座り込みグループを排除することもありうるというニュアンスの発言をした。
それは、エジプト国民の多くが座り込み排除を支持すれば、という条件付きであろう。そうなれば外国も強硬排除に、反対できなくなるかもしれない。それよりも、ムスリム同胞団の妥協や、内部分裂が先かもしれない。