エルドアン首相の最近の言動には、目に余るものがあると思っていた。その言動は、あるいは彼の心の中にある、自分に対する過信と、トルコの英雄ケマル・アタチュルクに対する、劣等感からなのかもしれない。
そのエルドアン首相に対する、トルコ国民の感情が爆発したのは、何処にでもありそうな、他愛もない理由からだった。それが、エルドアン首相の辞任を求めるレベルになり、与党AKPに対する非難にまでも拡大したのは、エルドアン首相の問題に対する、対応の間違いからだった。
イスタンブールのゲジ公園を潰して、大ショッピング・モールを作るという計画に対し、庶民は公園を守ろうと立ち上がった。しかし、政府が警察にデモ阻止を命じ、多数が負傷するという事態に発展した。
この事態を受け、ギュル大統領とアルンチ副首相は、警察の対応について庶民に謝り、公園潰しについても、デモ参加者の反対のメッセージを受け止めた、という返事を送った。
しかし、エルドアン首相は彼らとは異なり、あくまでも力によってデモを鎮圧し、計画を進めると息まいたのだ。そしてエルドアン首相は彼が言うように、より強硬な対応を警察に取らせた。その彼の決定が庶民を怒らせ、デモは全国規模のものとなり、首相退陣要求と、与党AKPに対する非難に発展していった。
このイスタンブールの公園ゲジ・パーク問題は、その後も続いている。モグラ叩きのように、どこかでデモがあると、それを警察が力で抑え込んではいるが、他の場所でデモが起こる、という状態が続いている。
結果的に、トルコの通貨リラが下落し、観光業はダメージを受けている。欧米諸国のトルコに対する評価も悪化している。トルコは何時の間にか、中東の理想の国家ではなくなり、同国の民主主義のイメージも悪化した。
この事態を受け、与党AKPの研究機関ユーラシア・グローバル・リサーチ・センターのレポートが、ゲジ・パーク問題への対応は、エルドアン首相の失敗だったと明言した。
ゲジ・パーク問題では、イスタンブール市長も反対しており、計画はあくまでもエルドアン首相の、個人的な意向によるものだとしている。エルドアン首相がこの公園再開発にこだわるのは、彼の個人的な理由からだ、という説がもっぱらだ。つまり、業者とエルドアン首相との関係が、疑われ始めているのだ。
与党AKPの付属研究機関が、ここまで明確にエルドアン首相批判を行ったのには、党そのものの将来に対する、不安からではないのか。エルドアン首相は少し頭を冷やさなければ、自分の立場が危うくなるのではないか。