イスラム教の断食の後のお祭りである、イードルフィトルの時期に、イラクでは多数の人が犠牲になっている。これに先立つラマダン中の7月には、なんと1057人が死亡し、2326人が負傷しているのだ。
そして、2013年年初から今日までの間に、4000人のイラク人が、殺害されているということだ。このイラク国内で頻発しているテロ事件については、昨日も書いたが、問題はセクトの対立がどうのとか、宗派の対立がどうのということではなく、テロの裏側にいる本物の犯人は誰か、ということを考えなければならない。
そして、その犯人は何が目的で、イラクでのテロを支援しているのか、ということを考えなければ意味がない。
イランのプレス・テレビが、イラクで頻発しているテロ事件の、内幕を説明している。しかも、その内幕というものは、イランが勝手に分析した結果ではなく、在イラクアメリカ大使だった、クリストファー・ヒル大使の証言を、もとにしているのだ。
そのクリストファー・ヒル大使の証言によれば、およそ次のようなものだ。『イラク政府に対する、最大の敵はサウジアラビアであった。イラクを安定化させようと考えるイラク人政治家は、サウジアラビアのターゲットになってきた。サウジアラビアはアルカーイダのスポンサーであり、資金を提供してきているのだ。
サウジアラビア政府はセクト間の対立に関与し、資金を提供し、かつ、ファトワという宗教裁定を下し、テロを正当化してきている。』つまり、そうした手法で、サウジアラビアはイラクの国内を、不安定化させてきたのだということだ。
サウジアラビアがこうまでも、イラクの国内問題に関与しようと思うのは、無理もない。1990年に起こったイラク軍による、突然のクウエイトへの軍事侵攻は、短期間ではあったが、クウエイトという国を、地図上から消し去ったのだ。
クウエイトが被った、祖国壊滅という、信じられないような悲劇が、サウジアラビアでは起きない、という保証はない。クウエイトで起こったことは、明日は我が身だと考える、湾岸諸国が多いのではないか。なかでも、イラクに隣接する、サウジアラビアの不安は、尋常ではなかろう。
サウジアラビアの人口が2963万人、イラクの人口が3478万人である事や、イラクには戦争経験があることなども、サウジアラビアにとっては、大きな不安材料であろう。
ただこの場合忘れてならないことは、サウジアラビアがイラクに対する、警戒心と敵意を強くしても、これだけ介入できているのは、アメリカの暗黙の了解があるからではないのか。