リビア政府と国民は、いま不安の中に暮らしている。それはアメリカが無人機をリビアの東部の主要都市、ベンガジの周辺で飛行させている数が、増えているからだ。もちろん、無人機は単に飛行しているわけではなく、情報収集とその後の攻撃を、前提としているのであろう。
リビア人の間では、アメリカの無人機は殺傷力が高く、きわめて危険なものだというイメージが、出来上がっているのではないか。述べるまでも無く、リビアで起こったカダフィ体制打倒の戦いで、無人機が果たした役割が、極めて大きかったからだ。
カダフィ側の軍は、リビアの反体制側の攻撃もあったが、アメリカの無人機による爆撃で、相当のダメージを受け、最後にはカダフィ大佐のありかを割り出して、リビアの反体制側の戦闘員に捕まえさせ、殺させているのだ。
今回のアメリカの無人機飛行について、リビア政府は十分な情報を提供されていないようだ。リビア政府がつかんでいるのは、アメリカの説明に沿ったものであり、それは『アメリカがリビア東部でアルカーイダが活動をしている。その拠点があるので攻撃しなければならない。なぜならばアメリカはアルカーイダの、アラビア半島や北アフリカでの行動が、極めて危険なものになっている、という判断を下しているからだ。』ということのようだ。
しかし、だからといってアメリカが、外国で勝手に軍事行動をすること、が認められるのだろうか。それでは一国の主権はどこに行ってしまったのだろうか、という疑問がわいてくる。確かにベンガジでは、アメリカ大使が殺害されていることもあり、なんとしても事前に阻止したい、ということではあろうが、少し過剰ではないのか。
アメリカが無人機を使用して攻撃しているのは、リビアだけではない。アフガニスタンでもイエメンでも、何度と無く無人機による攻撃が実行され、アルカーイダが受けたダメージについては知らないが、一般人が犠牲になっている数は少なくないのだ。
アルカーイダという免罪符と、自国民を犠牲にしない無人機の使用が、あまりにも安易に、アメリカに軍事攻撃をさせているのではないのか。それを止めなかったら、アメリカの攻撃の範囲は、どんどん広がっていくのではないのか。