エジプトのモルシー政権が、大衆デモと軍の行動によって追放された後、アメリカやヨーロッパの代表が、次々とカイロを訪問している。その訪問団は何とかモルシー前大統領と会いたいと思い、かつ釈放をさせたいと思っている。
これらの外国からの代表団に対応をしている、外交担当のエルバラダイ副大統領だが、彼の言動がエジプト国内で批判を受け始めている。以前から、この人物は出しゃばりであり、問題を起こすと書いてきたが、まさにその通りになってきたようだ。
エルバラダイ副大統領は政府の立場ではなく、彼個人の立場でものを語るために、外国から誤解を呼び始めているようだ。例えば、モルシー前大統領と現在の政府が交渉を始め、妥協を生み出しそうだということについて、エルバラダイ副大統領は、大きな期待を持たせる内容の、発言をしているようだ。
このため、エジプトの各方面から、『エルバラダイ氏が勝手なことを話したいのであれば、副大統領の職を離れるべきだ。』とか、『彼は在野にいるべき人物だ。』という意見が出始めている。なかには、『エルバラダイ氏の発言が、エジプト国内に分裂を生み出している。』と非難する者もいる。
外国の代表団に対して、エルバラダイ氏は『民主的な対応をするべきだ。』という内容の発言をし、現在ムスリム同胞団を、抑え込もうとしている政府とは、別の立場をとってしまっているのであろう。彼は外面をよくしたいと考えているから、こうした軽薄な発言をしてしまうのであろう。
しかし、そうした発言は外国からの代表団を刺激し、エジプト政府に圧力をかければ、妥協を引き出せる、という幻想を抱かせてしまうのではないのか。その結果は、エルバラダイ副大統領が考えていることとは、全く違う方向に、エジプトを導いていってしまう、危険性があるのではないのか。
エジプト政府内部には、外国の関与を拒否する傾向が、目立ち始めてきている。穏やかな表現ではあるが、大統領府のスポークスマンであるモスリミー氏は『外国の助言は受け付けるが、決定するのはエジプト自身だ。』と明確に外国の関与を、拒否しているのだ。
同様にアムル・ムーサ氏も『エジプトの事はエジプト国民が決める、アメリカは余計な口出しはするな。』と語っているのだ。
何やらこのところのエジプト政府の発言は、ナセル時代に戻ったような感じがする。『エジプトのことはエジプト自身で決定して行動する。それを邪魔するものは拒否する。』という立場だ。