イランでは8月4日、ロウハーニ氏の大統領就任式が行われた。世界から国家元首や外務大臣などを含む、要人30人以上が参加した、とイラン政府は報じた。イランに対するアメリカを中心とする、締め付けが厳しい中での就任式としては、結構な数の要人が、集まった方ではないか。
今回の就任式では、ロウハーニ大統領の口からは、特別に新しい内容の事は、出てこなかった。あくまでも今まで通りと言えば、今まで通りの内容であったと言えよう。『互恵関係』『相互尊重』といったものだった。
しかし、今回のロウハーニ氏の大統領就任式を機に、何か新しい風を感じるのは、自分の内面からであろうか。イランとアメリカとの関係に、進展への期待が感じられるのだ。
アメリカはロウハーニ氏の大統領就任に際して、『イランは早急に動くべきチャンスだ。』と語っている。また『イラン国民によりよい生活環境を与えるべきだ。』とも語っている。
しかし、新たなイランに対する経済制裁が、米議会で可決されており、イランの石油輸出は100万バレル削減されている、という厳しい現実もある。イランにとっては石油輸出が、主たる外貨収入源であるだけに、この経済制裁は極めて厳しいものであろう。
アメリカのこの対応は、一見イランに対するより一層の厳しい対応、ともとれるが、考えようによっては、イランに対し政治を早急に変えろ、ということではないのか。そして、イランが政治の変更の兆候を見せさえすれば、アメリカもしかるべき対応の変化をする、ということではないのか。
以前から、アメリカはそろそろイランとの関係を、改善したいだろうと思ってきた。それは、イランの持つ石油資源が膨大であることに加え、アメリカにとって必要な幾つかの要素を、イランが持っているからだ。例えばアフガニスタン対応やイラク対応では、イランの協力が極めて有効であろう。
アフガニスタンから運び出される麻薬の問題や、シリアへの対応でも、イランはしかるべき影響力を持っている。加えて、タリバンやアルカーイダといったイスラム過激派への対応でも、イランは大きな影響力を持っているだろう。これらは皆、イランとアメリカが共通して抱える問題であろう。同様の指摘はイギリスのガーデアン紙もしている。
そして忘れてはならないことは、アメリカによるイラン経済制裁が、既に30年の歳月を費やしたということだ。そのことは、イランは今アメリカにとって、垂涎の市場になっているということだ。インフラが老朽化し、石油産業でも新技術が必要であり、要人が乗る航空機もすでに老朽化している。アメリカは何らかの関係改善の口実を見つけ出し、ロウハーニ新大統領の登場と合わせて、イランとの関係改善に乗り出すのではないか。