エジプトはムスリム同胞団の、モルシー支持派によるシット・イン・デモで、過去5週間にも及ぶ混乱の中にあるが、ここに来てようやく解決への兆しが、見え始めているようだ。暑さの中の、しかもラマンダンの断食中のシット・イン・デモは、相当厳しいものであろう。老若男女を問わず参加しているのだから、公表はされていないが、相当数の人たちが体調を崩し、ある者は死亡に至っているかもしれない。
それに加え、何十万人といわれる人たちが、そこに座り続けているわけだから、ムスリム同胞団側は食糧を、供給しないわけには行くまい。加えて、何がしかの手当ても出ているということだから、相当の出費となっているのではないか。
ムスリム同胞団の資金は幹部の口座も含め、凍結されたという情報もあることから、ムスリム同胞団はいま、資金難に近づきつつあるのではないのか。ラマダンのエフタール(断食の後の食事)を提供できなくなった時、どうするのだろうか。
もちろん断食を始める前に食べるサフールや、夜中に食べる食事もあろう。それらの提供がストップしたとき、ムスリム同胞団を支持する人たちは、暑さと空腹で死んでいくというのだろうか。またそれを天国に行く切符だと思うのだろうか。
エジプトの臨時政府はムスリム同胞団に対して、デモを止めるよう決定を下している。期限付きで、それ以後も座り続ける場合には、力による排除もあるとしている。それは流血を覚悟している、ということであろうが、そう簡単にはムスリム同胞団も引くまいし、政府側もデモ参加者を、武力で追い出すわけには行くまい。
この難しい局面で、アメリカとヨーロッパ諸国が仲介に、本格的に乗り出し始めたようだ。それを受け、ムスリム同胞団側も妥協の姿勢を示し始めている。これまでは政府との交渉を、一切拒否していたのだが、ここに来て、幾つかの条件を出しはしたものの、話し合いに応じると言い始めている。
もちろん、そうは言ってもモルシー氏の復権、憲法に基づく問題の解決、シーシ国防大臣に対する、役割の制限などがあろう。したがって、今後の動きは簡単ではなかろう。だが、ムスリム同胞団が交渉に応じることになれば、少なくともある程度の秩序は回復されよう。それは経済の再活性化への鍵でもあり、将来への明るい展望ともなろう。