昔高校生時代に国語の先生がいて、その先生が『京都四条の糸屋の娘、、。』というのを教えてくれた。美人の娘二人は目線で世の男たちを殺し、侍は刀で殺すという内容だったように気憶する。まあ日本の場合は洒落であり、言葉の遊びだったのだが、アラブ世界ではそうはいかないようだ。
いまのアラブでは、京都四条の娘ではないが、似通ったことが起こっている。アラブの春に揺れる各国に、テレビや報道が関与し、反政府の戦闘員や政府軍の兵士が、銃弾で敵を殺すのをあおっているのだ。
たとえば、日本でも知られるカタールのアルジャズイーラ・テレビの場合、反政府の味方をすることで、視聴率を稼いできた。しかし、その報道が正しいかというと、必ずしもそうではなく、テレビ局の幹部の意向(カタール政府の意向)で、内容が再編集されているのだ。そのため現場の記者たちが抗議し、大量辞任するということも起こっている。
たとえば、アルジャズイーラ・テレビは、エジプトの2011年に起こった革命で、革命派を支援する報道をし、ムバーラク大統領側を徹底的に非難する報道をした。その後2013年に、大衆が反ムスリム同胞団政権運動に立ちあがり、それを軍が支援して、ムスリム同胞団出身のモルシー大統領を引きずり下ろす、ということが起こった。
その後、アルジャズイーラ・テレビは軍に抗議する、モルシー支持派の座り込みデモを支持し、軍がデモ参加者を銃殺している、という手厳しい報道を展開し始めた。
実態は軍の発砲を促す、ムスリム同胞団のメンバーの発砲により、軍が応戦して起こっていたのだが、死傷者を前にすると、その死傷者に同情する大衆が、軍を非難するようになるのは世の常だ。しかし、今回はそうとばかりは言えない状況が起こっている。ムスリム同胞団の手口が明らかになったからだ。
アルジャズイーラ・テレビと同じようなスタンスで、報道しているのはCNNだとアラブ人は指摘する。CNNもムスリム同胞団を支援する内容の、報道をしているというのだ。
これら以外にも、アラブのローカル・テレビがムスリム同胞団を味方する、報道をしている。例えば、同じムスリム同胞団の組織ハマースの運営するアルコドス・テレビは、まさにそれであり、ヤルムーク・テレビもそうだ。
こうなると、テレビや新聞の報道が真実を伝えている、というように単純にその報道内容を、信じてはいけないということになる。自分の目で報道をしっかり見、考えなければならない、ということだ。以前、大統領警護隊本部前にシット・イン・デモをしていた、ムスリム同胞団側のメンバーがテレビに向かって『軍に撃たれた!』と叫んでいたが、それは空気銃弾の跡だった。軍が発砲するのに、空気銃や散弾銃を使うことは、あり得ないだろう。
また、銃殺された人たちの多くが、眉間や喉を撃たれている、という報道があった。それはプロの狙撃手によるものであろうし、冷静な殺戮であろう。軍の兵士が興奮して撃ったとは、とても思えないではないか。