『モルシー前大統領を欧米は支援するのか』

2013年7月31日

 アメリカやヨーロッパから、次々に要人が中東を訪れているが、彼等はエジプトの大統領の座を追われたモルシー氏に、どう対応しているのであろうか、あるいはどう考えているのであろうか。

 EU代表のアシュトン女史が、エジプトを訪問し、やっとモルシー氏との会談にこぎつけたようだ。報道によれば、彼女はヘリコプターに乗せられて、カイロの外のある場所で、モルシー氏に会ったようだ。その場所がどこなのかについては、明かされていない。

 アシュトン女史は2時間にも及んだモルシー氏との会談後、モルシー氏は健康で普通の状態だった、と語っている。それ以外には、あまり詳しくは語っていないようだ。当然であろう。現在モルシー氏が置かれている立場は、極めて微妙なのだから、アシュトン女史が知ったかぶりをして何かを話せば、それはモルシー氏の今後に大きなマイナスになる、可能性があるのだから。

 モルシー氏は現在、スパイ容疑と脱獄犯容疑で、調べられている段階なのだ。スパイ容疑はアメリカやイスラエル、そしてパレスチナ側に情報を流していたのではないか、という疑惑であり、脱獄容疑については、2011年に起こった革命の混乱のなかで、彼はパレスチナのハマース・メンバーや、レバノンのヘズブラ・メンバーによる刑務所襲撃の折に、脱獄したとされているのだ。

 こうした状況では、アシュトン女史の発言が極めて微妙かつ,難かしいことになるのは、誰にも想像がつこう。しかし、それはムスリム同胞団側には、ある種の失望感を、与えたのではないか。

 ムスリム同胞団とすれば、モルシー氏釈放についてもっと踏み込んで、語って欲しいと思っていたことであろう。モルシー氏もそれは期待したであろうと思われる。

 問題は、モルシー氏がどこまでアシュトン女史に、ざっくばらんな話ができたのか、ということもある。ムスリム同胞団のメンバー、なかでも幹部の場合は、発言がそのままムスリム同胞団の、見解を示すことになることから、トップのムハンマド・バデーウ師の意見を、聞いてからでなくては語れないのだ。

 アメリカはどうであろうか。アメリカ政府は日本風に言えば、玉虫色の意見を述べている。エジプトで起こった実質的なクーデターについては、クーデターと明言していないし、モルシー政権の打倒についても、非難を避けているのだ。

 こうした欧米の立場は、決してモルシー氏やムスリム同胞団にとって、温かいものとはいえまい。それはこれらの国々の利益と合わせ、ムスリム同胞団に対する警戒心が、出てきたためでもあろう。