『アラブの春第二革命が広がるか・安易な道は軍の支配だが』

2013年7月27日

 

 エジプトで今起こっている騒乱は、第二革命だと判断したい。確かに軍がモルシー政権に、引導を渡したのではあるが、その裏にはムスリム同胞団側と、世俗派側との大規模衝突による、大量の死傷者が出る事態が、誰にも想定できたからだ。

 軍も何もない中では、ムスリム同胞団政権に対し、引導を渡すことは出来なかったろう。いわば、軍は出動の口実を待っていたし、それに世俗派の動きが、合致した形になったのであろう。

 問題は、ここ当分の間続くであろう混乱のなかで、国民の多数派が軍にもっと強硬な対応を、求めるようになるのではないかということだ。それは、十分にありうる話であろう。すでに、エジプト国民の一部からは、ナセル時代(軍による統治)のような統治を求める声が、聞こえて出しているのだ。

 そうした雰囲気が広がっていけば、軍の側でも権力を掌握したい、という願望が広がろう。シーシ国防大臣は今回の大規模デモを呼びかけ、国民に軍に対する権限拡大支持を求めたが、結果はまさに彼が考えたとおりに推移している。多分、彼の心のなかには、自分が大統領に就任する、ということもあるのではないのか

 それが現在のような事態収拾には、唯一の方法なのかもしれない。これだけ国民の間に、幾つものグループが誕生し、自分たちこそが国民の代表だ、と考えているようでは、統一して今後のエジプトを立て直していく、ということはほぼ無理に近いからだ。ムスリム同胞団ですら、今では幾つものグループに、分裂しているのだ。しかし、軍の台頭と権力の掌握を国民が望む事は、革命を逆戻りさせることでもあろう。

 アラブの春革命が最初に起こったチュニジアでも、イスラム組織であるナハダ党政権が誕生したが、そのイスラム色の強さに、国民の多くが反発し始めている。それに対しナハダ党政権は、力による対応をしているようだ。これまで二人の反政府側代表が暗殺され、さすがにチュニジア国民は二人目暗殺後に、反政府運動に本格的に立ち上がりそう、な雰囲気になっている。

 つまりアラブの春革命が起こった国々では、第二革命が起こりつつある、ということのようだ。その先に見えて来るのは、軍による統治なのか、血の滲むような努力による民主体制なのか、多分に軍の台頭の確率の方が、高いと思えるのだが。