トルコのエジプトに対する対応に、変化が生まれ始めているようだ。軍がムスリム同胞団を打倒した段階では、「エジプト軍がやったことはクーデターであり、非民主的行為で許せない』という厳しい非難をしていた。
加えて、エジプトの臨時副大統領に就任したエルバラダイ氏が、トルコのエルドアン首相に面会を求めると、即座に断りもしていた。しかし、時間の経過と共に、トルコ側はエジプトの新政府に対する考え方を、変え始めているようだ。
エジプトの戦争記念日に、トルコのギュル大統領は祝意の書簡を、アドリー・マンスール臨時大統領に対して送っている。これは明らかな関係修復のサインだと思うし、多くの専門家もそう見ているようだ。
何がトルコにエジプトとの関係修復を、こうも急がせたのであろうか。考えられることは二つだ。
:一つはシリア情勢の判断によろう。シリア国内では反体制派が、次第に過激な行動をとり、国内外で不評を買うようになっている。例えば、化学兵器の使用,死者の内臓を食べる、クリスチャンの首を切り落とす、政府軍兵士を土下座させて撃ち殺す、といった行為だ。
:第二に派湾岸諸国とエジプトとの関係改善であろう。サウジアラビアやアラブ首長国連邦そしてクウエイトは、エジプトの新政府との関係修復を急ぎ、巨額の経済支援を決定している。
シリアについては、トルコもさすがにここにきて、支援一辺倒ではまずい、と考え始めているようだ。現在では反シリア勢力が、幾つものグループに割れているし、反政府勢力間での、戦闘も起こっている。
その結果、シリアのクルド勢力がイラクのクルドや、トルコのPKK との連携強化に動いていることも、問題化してきているのだ。このままシリア・クルドの動きを放置しておけば、確実に北シリアには彼らの自治区が誕生し、それはトルコのPKKのシェルターになっていく、可能性が強いだろう。
以前から懸念してきたように、シリアのクルド、イラクのクルドそしてトルコのPKKが連携ひとつの組織にでもなっていけば、それはトルコにとって極めて危険な存在になろう。トルコの南東部には、主にクルド人が居住しているだけに、自治を叫ばれたのでは、止めようがなくなるかもしれない。
トルコはシリアとの関係を、修復しなければならなくなる可能性が、出てきているということだ。その場合、エジプトの存在感は大きいだろう。述べるまでもなく、これまでトルコと共に反シリア側を支援していた、サウジアラビアは戦列から抜け始めている。潮流は変わっているということではないか。