エジプトの国内混乱はいまだに続いている。ムスリム同胞団という組織がどんなものであるのかが、だんだん一般の人たちにも、明らかになってきている。つまり、国際組織であり国家感の無い、イスラム原理組織だということだ。
したがって、彼らの目的のためには、エジプトという国家を犠牲にしてもかまわない、ということであったのかもしれない。モルシー政権時代には、多くの受刑者が恩赦で逃れ、シナイ半島に隠れることになったが、今になってそれがエジプトにとって、大問題になりつつある。
エジプトばかりではなく、チュニジアでもムスリム同胞団と非常に近い関係にある、ナハダ党が政権を取ったが、エジプトの影響を受けチュニジアでも、その政権に反発する世俗派の動きが出てきている。つまり、チュニジア版のタマロド運動(反抗運動)が始まったのだ。
シリアの内戦にも影響を与えて、アサド政権が以前に比べて、優位に立ち始めているが、だからと言ってシリア内部が、安定してきているわけではない。イスラム原理主義組織ヌスラと、シリア・クルドの戦いが活発化してきている。
加えて、シリア・クルド組織が解放区を、トルコとの国境地域に確保しつつあることから、トルコ軍がシリア領内に侵攻し、戦闘を展開する危険も出てきている。トルコにとってはシリア・クルドとPKKの連帯が、生まれる危険性があることから、放置できないのだ。
イラクでも再度派閥争いが激化してきているが、その裏でアルカーイダの活動が、活発になってきている。先日起こった刑務所襲撃事件と、脱獄はまさにその典型であろう。ここでも国家の力が、弱まっているのだ。
パレスチナではエジプトのムスリム同胞団政権が、打倒されたことにより、ガザのハマース(ムスリム同胞団組織の別働隊)の力が弱まっている。それと反対に、ファタハの力が弱まっているかというと、そうでもないようだ。
それはアメリカがファタハ(パレスチナ自治政府)に対し、イスラエルとの妥協の和平交渉を進めろ、と強く要求しているからだ。下手な妥協を示せば、ファタハはパレスチナ住民から完全に失望されてしまおう。
エジプトはやはりアラブの大国だったのだろう。これだけアラブ各国にエジプトの変化が、影響を及ぼしているのだから。
そのエジプトがムスリム同胞団打倒後、何年あるいは何カ月かけて、安定を取り戻せるのかは、外国からの援助と、エジプトの政治リーダーたちの、裁量にかかっていよう。それが早期に達成されることを望む。