トルコのエルドアン首相が、エジプトのエルバラダイ副首相との会談を、拒否したというニュースが伝わった。それと前後して、エジプトの経済を困窮させようとして、スエズ運河を使用しないとも、エルドアン首相は語っている。
ムスリム同胞団のモルシー大統領との、良好な関係を壊されたエルドアン首相にしてみれば、それぐらいの悪口は言いたいのであろうが、何処か大人気ない感じもする。
エルドアン首相の最近の発言には、角のあるものが多いが、それは彼の心に余裕が、無くなってきているからではないのか。彼をめぐる悪いうわさ話は、トルコの中では知れ渡っている。しかも家族ぐるみだというのだ。
こうしたギクシャクするエジプト・トルコ関係で、エジプトのファハミ外相が、大人の発言をしている。エジプトはトルコとの関係を重視すると語ったのだ。当然であろう。トルコはエジプトに投資し、各種の工場を開いているのだから。
それはエジプトだけの要望ではなく、次第に人件費が高騰してきているトルコでは、製造業は厳しくなってきているからだ。エネルギー料金が安く、人件費も安いエジプト、加えて土地代も安いので工場建設などの投資先としては、エジプトはうってつけの国であろう。
エジプトの方も高い失業率を、少しでも下げたいという意向があり、トルコからの投資は歓迎であろう。そのような現実を考えた場合、両国関係がギクシャクするのは、極めて不自然なことだ。
トルコは以前にも書いたように、ムスリム同胞団をめぐり、湾岸諸国との関係に、齟齬が発生してきている。そのためか、サウジアラビアの港にはトルコ製品を積んだ貨物船が、入港できないで沖待ち状態になっている、ということらしい。
このためトルコ政府は、ヨルダンとの関係改善に動き出している。ヨルダンからなら湾岸諸国に陸送できるからだ。しかしし、その場合どうしてもスエズ運河を、経由しなければならない。
こうした現実的な事情から、エジプトとトルコの関係、ヨルダンとトルコの関係は、改善していかざるを得まい。そうなると、おのずからシリア問題に対するトルコのスタンスも、変化していくのではないのか。
トルコの反シリア勢力への支援の後退、トルコとエジプトのムスリム同胞団との関係の後退、といったことが予想される。もし、そのような状況に合わせた、外交姿勢の変更ができないのであれば、エルドアン首相は現実的な政治家とは呼べまい。