サウジアラビアの国防大臣兼副首相であるサルマン殿下が、サウジアラビアのジェッダ市で、シリアの反政府代表団と会談し、彼らに対し『これ以上シリア国民が飢えで苦しむような状況を、放置すべきではない。』と語った。
つまり、サルマン殿下が言わんとしたことは『もうそろそろ内戦をやめたらどうか。』という意味であったろう。無理もない、シリアの内戦は始まってから、すでに3年の月日が、経過しているのだから。
同時期に、イギリスの国防責任者であるリチャード氏は、シリアに対し飛行禁止空域を設定することに、反対の意見を述べている。彼の考えでは、戦闘機を排除したら、シリア軍が地上戦を本格化させるが、その時は戦車や兵員輸送車も、阻止しなければならなくなるが、そうしたことは、現実的には出来ない、ということのようだ。
イギリス政府は飛行禁止空域の設定に、反対するばかりではなく、反政府側であるSFAに対する、武器の供与についても、否定的な考えを示している。それは、武器を送った場合に、FSAだけではなくアルカーイダと関係のある、ヌスラ・グループなどにも武器が流れる、危険性があるからだ。
もう一つの問題は、反政府側が多数の組織の集合体であるために、統一した方針が打ち出せず、ただ時間だけが経過し、犠牲者が増え続けているからだ。イギリス政府は当分の間は武器供与ではなく、人道支援に絞る方がいい、と考え始めているようだ。
反政府側はイギリスの心変わりに怒りを感じており、イギリスがガス・マスクを送ってくれても、何の役にも立たないと反発している。イギリスが考えている5000個のガス・マスクでは、当然足りないだろうが、だからと言って全てのシリア人に、ガス・マスクを配ることも出来まい。
反政府側は、イギリスなどからの武器の供与が止まれば、シリアはアルカーイダが反政府闘争をリードするようになり、遂にはシリアを支配してしまうことになる、という懸念を抱いている。
イギリスや他の国々が、これまでとは異なり、次第に反政府側に対する支援を、削減する傾向にあるのは、内戦が3年にも及んでなお、先が見えないことと、150万人ともいわれる、難民の数の激増にあろう。
シリア難民に対する援助は、食糧から医療、教育その他と範囲が広く、その援助に必要な額は、膨大なものとなっている。そうした現実が支援各国を、反政府派に対して、腰を引かせているのではないのか。