『エジプト軍が戦っているのはムスリム同胞団連合軍だ』

2013年7月17日

 ムハンマド・モルシー氏がエジプト大統領の座から、引き摺り下ろされた後、エジプト国内ではムスリム同胞団と、エジプト軍および警察が、各地で衝突している。しかし、この場合は世界的な視線が、同国に向いていることもあり、エジプト軍は思い切った行動には、出ていない。

 他方、シナイ半島ではエジプト軍と何者かによる、闘いが派手に展開されている。ロケット弾臼砲機関銃が何者かによって堂々と使用され、エジプト軍は攻撃を受けている。

 この何者かについては、現段階では明言を避けているが、ガザのハマース(ガザのムスリム同胞団)の軍団であることは、ほぼ間違いあるまい。これまでも、2011年の革命時点で、ハマースのメンバーがエジプトに入り、刑務所を破壊し、多くのムスリム同胞団員を、脱獄させている。これにはレバノンのヘズブラも関わっていた、と言われている。

 ムスリム同胞団員に聞くと、ムスリム同胞団は各国それぞれの方針で、動いているということになるのだが、どうもそうではなさそうだ。ムスリム同胞団のメンバーではない人たちに聞くと、国際組織が出来ており、エジプトのムスリム同胞団のトップ、バデーウ師が世界中のムスリム同胞団に対して、指示を出している、ということのようだ。

 今回のエジプト国内のムスリム同胞団の動きは、本格的な闘争形式であり、彼らが武器を外国から取り寄せ、隠匿しているという情報は、半年以上前からあったが、ここにきて少しずつその武器が、姿を現しているようだ。

 シナイ半島でのハマースと、エジプト軍との戦いは、本格的な戦闘といっても過言ではないレベルに、達している。このため、イスラエルはキャンプ・デービッド合意以来遵守してきた、シナイ半島北部へのエジプト軍の展開禁止条項を解除して、エジプト軍の展開を認めた。

 今ではエジプト軍の敵が、イスラエル軍ではなく、ハマースがエジプトとイスラエル共通の、敵になっているのだ。早晩、イスラエル軍もこのエジプト軍の軍事行動の影で、ガザに対する攻撃を、始めるかもしれない。

 そうなれば、ガザのハマースは相当の被害を、覚悟しなければならなくなろう。その場合、国際世論が果たしてハマースの行動を、支持するかどうか分からない。エジプト軍は欧米諸国の目を気にして、今のところ軍事行動を極力控えめにしているが、我慢が限界に達したときは、暴発する可能性がある。

 ここ数日の間に送られてくる、エジプト国内のムスリム同胞団の反政府行動は、単なるデモのレベルではなくなり、戦闘に近いものになってきているし、ムスリム同胞団による武器の使用を証明する、映像も垣間見られるようになってきている。

以前大統領警護隊本部前で起こった、ムスリム同胞団支持者デモの、50人以上にも及ぶ死亡は、軍の発砲によるよりも、第三者の発砲によるものだったようだ。時間の経過とともに、そうした裏の事実が、次第に表面化してくる、ということであろう。