トルコの国内外政策に狂いが生じたようだ。やることなすことうまくいかないのではないか。
まずタクシム公園に巨大ショッピングモールを建設するという、エルドアン首相の計画が国内に、不安定な状況を生み出してしまった。ギュル大統領やアルンチ副首相は、警察の行き過ぎた対応を謝罪し、市民の意向は了解したと言ったのだが、エルドアン首相は2~3日で、蹴散らしてやると息巻いた。
そもそもの躓きは、アルジェリア訪問だったのかもしれない。エルドアン首相はシリア対応で、アルジェリアの賛同を得ようと思ったが、あっさり断られたのだ。そのことがタクシム公園問題での、強硬発言になったのかもしれない。
タクシム公園デモは全国に広がり、そのことが国内不安を生み、通貨トルコ・リラは値を下げている。トルコ中央銀行も、今後の動向に懸念を、抱き始めたようだ。
エルドアン首相は、エジプトのモルシー前政権を、断固支持するという姿勢が、各国から冷たい反応を、受けているのではないか。湾岸諸国のサウジアラビアやクウエイト、UAEはトルコとの経済関係を、弱めていく可能性があろう。
加えて、シリア介入だが、世界中から反アサドの戦闘員が、シリアに入っていくゲートの役割を、トルコは果たしていた。しかし、エジプトの第二革命後、明らかにシリアの反体制側は力を弱めているし、シリア人が組織するFSA(自由シリア軍)は、アルカーイダとの戦闘が先だ、と言い始めている。場合によっては、シリア軍との共闘もありうるのだ。
そのことに加え、最近イスラエル空軍が、シリアの武器庫を空爆したが、その際にトルコの空軍基地を、使用したことが明らかになっている。ダウトール外相はこれを否定したが、何の意味もないだろう。それだけ明らかなのだし、イスラエル政府がトルコ軍基地使用を、発表しているのだから。
エルドアン首相には、もう一つ不幸なことが起こった。それはシリア政府がアレッポ大学から発行した、エルドアン首相への名誉博士号を、はく奪すると発表したことだ。極めて不名誉な話であろう。
トルコはここに来てもう一度外交を、考え直さなければならなのではないか。狂い始めた歯車は、一度外さなければ元には戻らないだろう。強気一辺倒できたエルドアン首相の政策が、いま大きな壁にぶつかっているということだ。
最近になって、彼に対する評判は国内の支持派の間で、あまり芳しくなくなってきているそうだ。何事にも引き際というものが、あるのかもしれない。そういう自分も、その事を肝に銘じておくべきなのだろう。