『トルコ・リラ下落の危険性』

2013年7月 9日

 強気の経済を維持してきたトルコが、ここにきて弱気に転換しているのであろうか。トルコの通貨リラが過去3年で、最高の下げ幅を示したのだ。

 通常トルコ・リラは1ドルに対して、18リラ前後を維持してきていらのだが、それが1945リラにまで下がったのだ。

 トルコ・リラが下がったことについて、このニュースを伝える記事には、明確な理由は表示されていないが、大体の想像はつく。一つはイスタンブールのゲジ公園を潰して、巨大なショッピング・モールを建設するという計画を、政府が発表したことにあろう。

それにイスタンブールっ子が反発し、大デモになったこと。デモはトルコ中に飛び火したこと。しかも1カ月以上経って今なお、くすぶっていることにあろう。

 このデモによりトルコに向かう観光客が減ったこと、そして観光客相手の売り上げが落ちたことが挙げられよう。

  トルコの通貨を下げたもう一つの理由は、エジプトの第二革命であろう。エルドアン首相はエジプトのムスリム同胞団政権を、イスラム主義とみなし連帯を呼びかけ、トルコの実業家たちに大型投資を、呼び掛けたのだ。

 しかし、エジプトの現状を見ると、トルコの実業家たちの投資が失敗に終わる確率が、非常に高くなったということだ。ここにきて、トルコ政府はどうやってエジプトから自国民を、安全に非難させせるかという問題が、最重要課題の一つになってきている。

 エジプトの電気代、人件費、土地代などの安さを狙って、多くのトルコの製造業者が、アレキサンドリアを中心に企業進出していた。それが逆回転を始めている、ということであろう。

 エジプトの第二革命はシリアの内戦にも、大きな影響を及ぼすことは必定であろう。そうなると、シリアの反政府派に肩入れしているトルコとしては、今後厳しい状況を想定しなければなるまい。

 もちろん、こうした一連の変化に加え、ヨーロッパ諸国のトルコに対する、嫉妬の感情もあろう。ヨーロッパ諸国が景気低迷なのにもかかわらず、トルコは上昇機運が強かったからだ。

 トルコの今回の通貨下落には、多分にエルドアン首相の強気の政策が、災いしているのではないか。あるトルコ人の友人は「少しエルドアンは調子に乗りすぎて、周りの人の意見を聞かなくなっていた。ゲジ公園の開発も彼が強引に進めようとしたのであり、他の高官が大衆の意見を尊重したのに、彼はそうしなかった。」と批判していた。エルドアン首相には頭を冷やしてほしいものだ。