『トルコにとっては痛手のエジプト第二革命』

2013年7月 6日

 

 トルコのダウトール外相やエルドアン首相が、今回のエジプトの政変劇に噛み付いている、軍によるクーデターは認められないし、それを放置している欧米も悪いといった内容の非難を展開している。

 当然であろう、今回エジプトで起こった第二革命は、少なからぬダメージをトルコの経済に、もたらす可能性があるからだ。トルコとモルシー大統領のエジプトは、通商上の特別な関係に合意しており、トルコの食料品がスムーズにエジプトに、輸出できる状態になっていたのだ。それはお互いにイスラム色の強い統治国家、というトルコ側のエジプのムスリム同胞団へのアプローチの結果だった。

 今回のエジプトの変革で、この貿易合意がご破算になり、支払いをめぐる問題にも不安が生じ、トルコ側ではエジプト向けの輸出品が、イスケンデルンの港で待機となり、食料品は傷む可能性が高まっているようだ。

 そればかりではない。今回のエジプトのムスリム同胞団崩壊は、新生エジプトとサウジアラビアやクウエイト、アラブ首長国連邦との関係を改善し、これらの国々からエジプトに対し、経済援助が行われようし、エジプトへの投資も進もう。モルシー政権下では湾岸諸国はムスリム同胞団に対する警戒心と、経済が悪化し、社会が不安定だったために、こうした活動は完全にストップしていたのだ。

 エジプトに対する湾岸諸国の関心が高まれば、現在エジプトの企業は窮地にあることや、エジプト・ポンドが安価になっていることもあり、湾岸からの投資が進むと、トルコに今まで流れていた資金が、減少することになろう。

 エジプトの政変はトルコにとって、軍事的にも問題があろう。シリアのアサド体制は今回のエジプトの革命が、シリア国内のムスリム同胞団に対する支援が滞ることになろうということから、エジプト革命を歓迎しているし、事実その通りであろう。

 そうなれば、これまでトルコがカタール、サウジアラビアが送る、シリアの反体制派支援の、中継国としての立場が、危ういものになるのではないか。サウジアラビアやアメリカが、今回のエジプトの政変を機に、暗にアサド体制が残ることを認めるかもしれない。

 トルコにとっては、シリアの状況が変化すれば、アメリカとの関係で使ってきた切り札の一枚が、失われてしまうということだ。トルコでくすぶっている反エルドアンの運動に加え、今回のエジプトの政変は、エルドアン首相の立場を弱めることになる可能性があろう。