しかし、悲惨な状況が起こっているのは、エジプトばかりではない。内戦が2年以上も続いているシリアは、もっと悲惨な状況にある。6月の半ばにヨルダンの難民キャンプを訪れたのだが、それでも人は普通の生活を取り戻そうとしていた。
あるキャンプの中の一家族を訪問した時は、お茶こそ出てこなかったが、主婦が息子の写真を見せて『死にました。』とさみしそうに語っていた。その青年は人を殺すような表情ではないのだ、が戦闘になれば参加せざるを得なくなり、そして死んでいったのだろう。
そうした犠牲者の数が、10万人を超えたという報道があった。人権監視団による発表なのだが、どこまで正確かはまさにアッラーの神だけが知っている、ということであろう。犠牲者の実数は、それよりも少ないかもしれないし、多いかも知れないのだ。
その10万人という数のうちの、何割が戦闘に参加した人たちであり、それ以外の一般人たちなのであろうか。戦闘員と一般人との割合が半々だと仮定しても、5万人の一般人たちが犠牲になっているということになる。
当然のことながら、その危険を逃れようと多くのシリア人が、自国から逃れ周辺諸国で難民生活を送ることになった。その合計数は100万人とも、150万人ともいわれている。
しかし、逃れた先に彼等を待っているのは、少ない援助物資から来る生活苦だ。国際機関や受け入れ国の対応は、難民の急増に伴い、間に合わない状態になっているのだ。
そうなると、一家を救うために若い女性が、犠牲にならざるを得なくなる。一家を救うためには、彼女らが夜の女になるか、あるいは臨時婚の対象となるかしかないのだ。
夜の女になりそのことが世間に知られれば、たちまちにして家族の男たち(父親や兄弟)が彼女たちを殺すことになる。一家の名誉を守るための『名誉の殺人』と呼ばれ、殺人の罪に問われないのが普通だ。最近ヨルダンで行われた調査の結果によれば、15歳前後の若い層も、この名誉の殺人を受け入れている、ということだ。
名誉の殺人を逃れ家族を助けるために、少女たちに残っている手段は臨時婚をすることだ。湾岸の金持ちじいさんたちと、1週間程度の臨時婚契約を交わし、しかるべき金銭を受け取るのだ。イスラムでは合法なのだが、現実は13,4歳の少女が、性の玩具にされているのだ。そのことについては、誰も非難しようとしない。