アメリカが中心となって、シリアの反体制派に兵器を供与するということが、正式に決定したようだ。このことに関しては、ヨーロッパ諸国の間では意見が割れている。兵器を供与すべきだとする国と、反対する国が出ているのだ。
兵器が供与されれば、シリアの政府と反政府双方は、平和的な話し合いによる問題の解決を図るよりも、武力によって自派を優位に立たせよう、という努力に傾注しよう。そうなれば、戦闘員の若者たちが、多数犠牲になるということだ。
問題は平和的な解決の努力が一向に進まないなかで、戦闘面だけが突出しているという状態だ。そして、その戦闘に関わる者たちは次第に数を増し、何種類ものグループが、戦闘に参加しているということだ。
シリア政府側について戦っているグループだけでも、レバノンのヘズブラ組織、パレスチナのPFLPGC組織、そしてイラン軍やロシア軍が参加している、とも言われている。
他方、反政府側はFSA(自由シリア軍)と呼ばれる、シリア人の結成した反政府組織に加え、最近ではヌスラと呼ばれる組織、イラク・アルカーイダと呼ばれる組織などが挙げられよう。
これに加え、イラクからもスンニー派の戦闘員が、参加しているといわれているし、アルジェリアではイスラエルのモサドが、アラブの組織を名乗り、戦闘員を集めているという情報もある。
イラクからはスンニー派だけではなく、シーア派組織が戦闘員をシリア政府支援に、送っているといわれているし、チュニジアからもジハードの名の下に、戦闘員がシリア国内に入っている。
サウジアラビアからさえシリアに戦闘員が入っており、彼らは反政府側を支援しているということだ。それは単純な論理で、アサド政権がシーア派の一派である、アラウイ派であることから、スンニー派を支援するということだ。
反シリア側についている戦闘員たちの多くが、実は出稼ぎ者であるという点を見逃すわけには行かない。全員がそうだとは言わないが、月給800ドルが支払われているという情報がある。
月給にして800ドルという金額は、アラブの貧しい国の人たちからすれば、結構な金額だ。戦闘に参加し負傷することも死亡することも無く、最終的に帰国出来れば、彼らにとってまたとない出稼ぎの機会であろう。
サウジアラビアからは反体制の危険分子が追い出され、罪一等を許されるという話もある。シリア政府側についているパレスチナ人たちは、シリアに支援を受けてきたことへの恩義と、生活の場を提供されていることによろう。ヘズブラも同様に、シリア政府には恩義がある。そうしたシリアの民主化とは全く関係ない理屈が、いまシリア国内で戦闘を起こさせているのだ。
アメリカはそのシリアの反政府勢力といわれる、各グループに兵器を送り込み、シリアで戦闘状態が続くことを、願っているのであろうか。そうなれば、多くの戦闘可能な若者が、不具者になるか死亡することになり、イスラエルにとっては好都合なことであろう。
戦争を正当化させる論理は、ほとんどの場合真実ではない。そのことを頭に入れてシリアのニュースを読まないと、実に馬鹿げた判断を下してしまうということだ。