ヨルダン川西岸地区にあるナブルス市の、アンナジャー大学の学長であるラーミー・ハムダッラー学長が、突然マハムード・アッバース議長から、首相職に就くことを命じられた。
それは6月2日のことだったが、6月20日の段階で彼はマハムード・アッバース議長に対し、辞表提出していることが明らかとなった。その理由は、マハムード・アッバース議長が首相職の権限範囲に、あまりにも割りこんでくることに、嫌気がさしたからだと説明されている。
ラーミー・ハムダッラー氏はイギリスで高等教育を受けており、権限に関する考え方が西側的であり、厳しいのかもしれない。
今回の問題であるマハムード・アッバース議長による、首相職への介入という問題は、実は裏がある話のようだ。マハムード・アッバース議長は長年腕を組み合ってきた、サラーム・ファッヤード首相を首にしたが、それはファタハとハマースとの間に横たわる、問題に起因していたようだ。
そもそも首相職はハマースのイスマイル・ハニヤ氏に正統性がある。彼イスマイル・ハニヤ氏は正当な選挙で、選出されているからだ。しかし、マハムード・アッバース議長はハマースのイスマイル・ハニヤ氏ではなく、マハムード・アッバース議長と同じファタハのサラーム・ファッヤード氏に首相職に就かせ、イスマイル・ハニヤ氏にはガザの首相(?)、という権限に制限してきていた。
今回のサラーム・ファッヤード首相が辞任した裏には、ファタハとハマースとの仲直りに、目的があったようだ。政治色のあまり強くない穏健派の、しかも、イギリスで教育を受けた学者に、首相職を任せることによって、ファタハとハマースとの問題を、解決するつもりのようだった。
しかし、それはあくまでもマハムード・アッバース議長がやることであり、ラーミー・ハムダッラー首相には何の権限も、与えられていないということであったろう。その事実に気がついたラーミー・ハムダッラー首相は、ばからしくなって役を降りたということではないか。
しかし、ラーミー・ハムダッラー氏がアンナジャー大学の学長に就任できたのは、マハムード・アッバース議長の任命によるものだっただけに、すんなりとラーミー・ハムダッラー氏の辞表が、マハムード・アッバース議長に受け入れられるか否かは不明だ。もしそれでも固辞した場合、ラーミー・ハムダッラー氏は、すべての公職を解かれてしまうかもしれない。