『エルドアン首相の強気は墓穴を掘ることになる』

2013年6月19日

 トルコの第二の都市イスタンブール都心の、タクシム広場のゲジ公園を潰し、大ショッピングモールを建設する計画を、エルドアン首相は許可した。そのことがイスタンブールっ子にとって、は許せなかった。

 たちまちにして集まった群衆は、ショッピングモール建設の手始めとなる、公園の樹木を伐採する作業を、阻止する行動に出た。それでも最初のうちは公園を守ろうという、平和的な抗議集会であり、何ら暴力的なものではなかった。

 エルドアン首相はこの頃、北アフリカのアルジェリアとチュニジア訪問に出ていたが、国内にいたギュル大統領とアルンチ副首相は、国民の意向をすぐに汲み上げた。『皆さんの要望メッセージは受け止めました、暴力的な対応をしたことを詫びます。』という至って紳士的なものだった。

 しかし、外遊中のエルドアン首相は政府の要人2人が、デモ隊に対して示した立場とは全く異なる、強硬姿勢を見せた。『メッセージ?そんなもの受け取っていない、工事は強行する。反対する者は蹴散らす。2~3日もあればデモは解決できる。』という強気のものだった。

 しかし、その後4日が過ぎても5日が過ぎても、このデモは終わっていない。それどころか、種々の組合がストを決行するに至っている。事態はエルドアン首相の予測とは異なり、悪化しているのだ。

 それにもかかわらず、エルドアン首相は強気の立場を変えず、警察にデモ隊への弾圧を命令し、警察を称賛し、警察の弾圧対応を拡大するとうそぶいている。

 これでは確実に国内外に、エルドアン支持を減らしていくだろう。せっかくダボス会議以来大英雄になれた男エルドアン首相は、単なる独裁者になり下がってしまうだろう。国民の間からは、『エルドアンは独裁者だ』という抗議や、『辞任しろ』という叫びが起こっている。

 このまま推移すれば、エルドアン首相がメンバーである、与党AKP全体のイメージが悪化していくことになり、次の選挙では確実に与党の座を、降りなければならなくなろう。そこで常識的に考えれば、エルドアン首相に辞任させ新しい首相を立てて、政治をやり直すということではないか。

彼らの政党であるAKPよりも、エルドアン首相が大事だ、ということはあり得まい。AKPの幹部は党を守るために、簡単ではないが、エルドアン首相に辞任をさせるのではないか。もちろん、あるいは状況が鎮静化するかもしれない、ということへの期待もあろうから、今日明日に辞任はさせまい。手を打つなら早いほうがいいだろう。党の受けるダメージが少なくて済むからだ。