イランでは来週の6月14日、大統領選挙が行われる。このため各候補は競って、自分の考えを国民に訴え、支持を増やそうと思っている。
ある候補は若者のご機嫌を取るために、若者の意見を聞き政治に取り入れるべきだと語り、ある候補はイランの文化を大事にすべきだと語り、ある候補は雇用の創出が最も大事だ、と有権者に訴えている。
国内経済の安定を訴える候補もいるが、それらのすべての訴えは、どこかが間違っている。現在イランが直面している物価高は、国内の経済政策の失敗が、直接的な原因ではない。雇用問題もしかりだ。
こうした通り一遍の候補者たちの訴えとは、異なる意見を述べているのが、ロウハーニ候補だ。彼はイランが直面している多くの問題の核心は、外交にあるというのだ。イランの外交政策の失敗が、イラン通貨の下落を生み出し、国内市場をインフレ状態にし、国民は生活に窮しているというのだ。
まさにその通りであろう。しかし、問題はイランの外交を改善していくためには、核問題を避けては通れないということだ。イランが現在のまま核開発を進めていけば、当然の帰結として、世界なかでも欧米の圧力を受けざるをえまい。
アメリカは最近も、新手のイランに対する経済制裁を考え、西側諸国に対して協調を呼びかけている。通貨に関してもっと圧力をかけよう、ということのようだ。
ロウハーニ候補はズバリ、このイランと欧米諸国とに間に横たわる問題の、核心をついたということだ。
そこで彼がどうやって外交問題を、改善するかということになろう。考えられるのは、IAEAなどの査察をもっと自由にすること。査察の後には共同の記者会見を開いて、IAEAがデマの情報を流すことを、抑えるということではないか。
もちろん、その共同記者発表はイランだけではなく、ロンドンでもニューヨークでもいいだろう。
ロウハーニ候補がこの問題の解決に、どこまで具体策を持っているかは分からないが、『外交が最重要課題だ』と指摘したことが、今後、イラン国内で新しい反応を、呼び起こすのではないか。
誰かが『王様は裸だ』と言い出さない限り、なかなか問題は改善には向かわない。老骨に鞭うって、ロウハーニ候補が大統領選挙に立候補し、イランの抱える問題の核心をついたことに敬意を表しよう。
他方では、ラフサンジャニ師とハタミ師が、連帯しようとし動き始めている。彼らもイランが前進するためには、改革が必要だと真剣に考えているのだ。イランの近い将来に、期待しよう。