『カルダーウイ師の命令は正しいのか』

2013年6月 2日

 カタールに60年にも渡って滞在し、アルジャズイーラ・テレビを通じて、イスラムの説法をしているカルダーウイ師という、ムスリム同胞団のメンバーのイスラム学者がいる。

 カルダーウイ師のテレビ番組を視聴しているムスリム人口は、6千万人にものぼるといわれている。それを信じた上での話だが、それだけに彼が何をどう話すかということが、イスラム世界に及ぼす影響は少なからずあろう。

 カルダーウイ師の発言はカタールのドーハで開催された、シリアの国民を支援する会のなかで語られたものだ。カルダーウイ師はこの中で、地域のスンニー派ムスリムで戦える者は、シリアに行ってアサド体制打倒の闘いに加われ、と命令したのだ。

 カルダーウイ師はイランとレバノンのヘズブラが、アサド体制を支援しているのだから、スンニー派側も反シリア政府側を支援すべきだ、ということなのだ。そして、レバノンのヘズブラについては『アッラーの党ではなく悪魔の党だ』とまで非難している。(ヘズブラ:ヘズブ=党、ラー=アッラー)

 カルダーウイ師については、いろいろな噂が飛び交っている。必ずしもイスラムの学者だけの顔を持っているわけではない、という人たちもいる。今回のカルダーウイ師の発言は、スンニー派の若者の間に、少なからぬ反響を呼ぶのではないか。

 少なくとも、カルダーウイ師の発言はスンニー派とシーア派との対立関係を、より一層強めることになろう。少なくとも、常識人としてはこの時期に、ここまで反シリア体制側を支援する発言は、すべきではないと思えるのだが。

 もし、中東地域のスンニー派ムスリムが、シリアの内戦にぞくぞく参加するようなことになれば、膨大な犠牲者が出ることは確実であろう。

 宗教を語る者は、現在のシリア情勢に対し、話し合いによる解決を呼びかけるべきではないのか。ロシアやアメリカが話し合いによる、問題の解決を努力しているときに、カルダーウイ師がそれをぶち壊しにするような発言をしたということは、彼には一般的な良識のかけらも、無いということではないのか。