『シリア問題ジュネーブ会議は開催が困難』

2013年5月31日

 アメリカのケリー国務長官が、ロシアや中東の関係国との間に進めてきた、シリア問題をめぐる、ジュネーブ会議の開催が危ぶまれている。場合によっては、開催が不可能になるかもしれないということだ。

 それは、第一にシリアの反政府勢力であるシリア国民会議(SNC)が、このジュネーブ会議参加に際して突き付けた条件が、あまりにも現実的ではないからだ。シリア国民会議は反シリア勢力各派の集合体であり、各組織がそれぞれに利益を考慮して、意見を述べているのであろう。

 こうした形では結局のところ、強硬論を吐く者が優位に立つことになる。その強硬論とは、アサド大統領とその家族を国外追放するか、権力の座から引きずり下ろすかだ。こんな条件を会議の前に提示されたのでは、アサド体制側が会議に参加できるはずはないだろう。

 シリア国民会議はアサド体制の政府高官についても、同様の厳しい要求を、突き付けている。軍の幹部、治安の幹部は押し並べて、辞任しろというものだ。そして、彼らには将来を含めてであろうが、政治に関与する権限を与えないというものだ。

 リビアの前例を引けば、カダフィ体制の高官だった人物は、革命後の体制内部でしかるべき地位を得られないということが、リビア議会で決定されている。つまり、シリアの場合も同様に、全てのアサド体制につながる高官たちは、政治の世界から追放されるということであろう。

 他方、アサド大統領側も決して弱腰ではない。アサド大統領はシリア国民が望むのであれば、彼の大統領任期が切れた2014年の大統領選挙に、再立候補するつもりであることを明かしている。シリア国民がそれを望むか、望まないかにかかわらず、アサド大統領はそれまで持ちこたえれば、立候補するということであろう。

 こうしたアサド体制側の強気の裏には、ロシアがアサド体制を絶対守りぬく、という強い姿勢が示されているからであろう。加えて、ヨーロッパ諸国なかでもフランスとイギリスが、シリアの反体制側に武器を供与することを決めた後、ロシアは最新型の地対空ミサイル、S-300をシリアに供与している。

 このミサイルに加え、他にも幾つかの新型兵器が、ロシアからシリア政府側に提供されている。その結果、アサド体制側は十分戦いが続けられるし、最終的には反体制派をねじ伏せることに、成功すると読んでいるようだ。

 いずれにしろ、シリアの内戦は当分のあいだ、続くということになりそうだが、その結果一番将来を担っていくべき、若者たちが犠牲になるということだ。幸いにして、命を長らえることができた者も、多くは身体障害者になっているのではないか。そのことはシリアの将来を、限りなく暗くするということだ。