スーダンとの国境に近いグムズ地区に、エチオピアが巨大なダムの建設を、計画している。完成時の発電能力は6000メガワットということであり、原発の発電量で計算すると、6基分の発電量だということだ。
エチオピアはこの膨大な量の電力を、自国だけではなく、周辺諸国にも売る計画のようだ。
ダムは47億ドルの予算が見積もられている。そこで疑問に思うのは、そんな巨額を今のエチオピアは、どう集める気なのだろうかということだ。どんな素晴らしい計画も、資金の目処が立たなければ、絵に描いたモチに過ぎない。
青ナイルに建設が予定されている、このダムについてエジプト政府は、同国が最も川下であることから、クレームをつけ始めている。自分の国に流れてくる水量が減れば、アスワン・ハイダムの発電量も減るし、農業や工業生産用の水が制限されれば、影響が出るからだ。
エジプトがだいぶ前から、エチオピアの大型ダム建設に、神経を尖らせてきたのには訳がある。もし、エチオピアが建設したダムを満杯にし、一気にそれを放出すれば、エジプトのダムは決壊し、大洪水が起こる危険性があるからだ。
もちろん、農業や工業への水不足が響くことが懸念されもしよう。同時にナイル川の水量が減れば、川下のナイル川の流れは遅くなり、いまでも水質が悪化しているものが、もっと悪化しとても飲料には使えなくなる、危険性があろう。その水質汚染問題は、すでに起こっているのだ。
エジプト政府は以前から、エチオピアのダム建設には、イスラエルが資金調達する、と考えてきた。そうであるとすれば、イスラエルは悪意でこのダムを活用することを、考えるだろうという推測があるのだ。
しかも、その推測は荒唐無稽なものではない。エチオピアの巨大ダムが完成する以前の話として、イスラエルによるエジプトの、アスワン・ハイダムへのミサイル攻撃ということが、話題に上ったことがあったのだ。
アスワン・ハイダムの真下には活断層があり、ミサイル攻撃を受けた場合には、ダムが完全に崩壊してしまう、危険性があるのだ。そうなると、アスワン・ハイダムがミサイルで攻撃を受けた数時間後には、カイロの街のほとんどが大洪水に見舞われ、水没してしまうという予測がある。
こうして考えてみると、エチオピアが建設を予定している巨大ダムは、エジプトにとっては大問題であることが分かろう。もちろん、エジプトはイスラエルがアスワン・ハイアムを攻撃するとか、エチオピアに命令して一気に水を放流するとかといったことは、表立っては口に出来ないだろう。