『ケリー国務長官がモルシー大統領に苦言』

2013年5月27日

 中東を歴訪していたアメリカのケリー国務長官が、エジプトのモルシー大統領に苦言を呈した。

 それはアメリカがエジプトを経済援助しようとしても、アメリカの議会を納得させられる状況に無い、ということだった。

アメリカとしてはエジプトの革命後、ムスリム同胞団が政権を取り、エジプトを再建させていくだろう、という期待があったからだ。しかし、現状はそうではない、ますます国内状況が悪化しているのだ。

IMFとの交渉でも、一旦はIMF48億ドルの借款を約束したのだが、その後のエジプトの経済状況は、何等改善されていない。そのために、IMFとエジプト政府との交渉は、頓挫した状態になっている。

ケリー国務長官にしてみれば、少しでもエジプト政府が経済改善の努力をし、何らかの前向きな状態を生み出せば、それを口実にアメリカ議会を説得し、援助を引き出すことが出来るのだが、全くそうした状態に無いことに、痺れを切らしたのであろう。

エジプトの観光業は、最も大きな外貨獲得手段の一つだが、この分野でも改善は見られないし、同時に外国からの投資も、全く改善の兆候を示していない。これではアメリカの援助も、IMF の借款も提供できないということであろう。

今後も現在の状態が続けば、エジプトはどの国からも援助や借款が、期待出来ず、ジリ貧になっていき、経済危機に突入し、国民は基礎的なパンさえも、口にすることができなくなるということだ。 

そうなれば、エジプト社会はそうとう混乱せざるを得なくなろう。アメリカやIMFがムスリム同胞団政権に対して、支援を送らないのは政治的な駆け引きからなのか、あるいは純然たる経済的理由なのかは、まだ分からない。

しかし、明らかなことは、エジプトがいま経済危機の、時限爆弾が爆発する時を待っているということだ。

アメリカはエジプトにムスリム同胞団政権が誕生し、汚職が追放され、イスラム的民主主義が実現していくことに、期待していたのであろう。それはトルコの成功例を、判断材料にしたためであろう。

しかし、エジプトとトルコとでは、社会の発展段階が異なるし、民主化の発展段階も異なっているのだ。そのことをアメリカは誤解したのであろうか。