『イスラエルが大量の住宅をパレスチナ人のために建設実は』

2013年5月16日

 数日前のことだが、イスラエル政府がパレスチナ人のために、1140戸の住宅を建設する、という情報が流れた。イスラエル政府はいま緊縮財政であり、国防予算までも削られる状態にあるのに、何故そのようなことがと思った。

 実はこのパレスチナ人用の、多数の住宅建設は、パレスチナ人をできるだけ多く、ヨルダン川西岸地区から追放するための、手段のようだ。これまでイスラエルは、ヨルダン川西岸地区をABCD地区といったふうに分け、イスラエル政府直轄地と、パレスチナ自治政府の直轄地に分け、不明確なところは双方によって、管理されるという話だった。

 しかし、実際には軍事力にものを言わせ、イスラエル側がヨルダン川西岸地区の土地を、勝手に使用してきていた。例えば、イスラエル人による入植地建設という名の、土地接収がおこなわれ、それを阻止しようとするパレスチナ人は、逮捕投獄されてきていた。

 今回イスラエル政府が、パレスチナ人のために建設を、予定している場所は、ヨルダン川沿いの渓谷地域であり、エリコ市のそばのようだ。

 ここからイスラエルに出稼ぎに行こうとすれば、交通の便の問題があろう。また、渓谷地域であることから、イスラエル軍側はパレスチナ人の活動を、簡単に抑え込むことも、出来るのではないか。

 エリコに近い場所に住宅が建設されるということは、ヨルダンに行きやすい場所だ、ということでもある。つまり、不都合はパレスチナ人は、どんどんヨルダンに追いやる、ということではないのか。

 もちろん、イスラエル政府はヨルダン川渓谷地帯は、イスラエルとヨルダンとが工業地帯にしよう、と計画している地域であり、イスラエルが用意する、新住居に移り住んだパレスチナ人は、そこで働きやすいし、通勤の便もいい、と説明することであろう。

 確かにそうであろう。しかしその代償は小さくない。パレスチナ人がこうした形でどんどんヨルダン川西岸地区から離れていけば、結局ヨルダン川西岸地区は、イスラエルによって支配されることになるということであろう。

パレスチナ人が自分の生活を優先するのか、あるいは、将来建設されるであろう、幻のパレスチナ国家のために、自分の利益を犠牲にするのか。今回のイスラエルによる、パレスチナ人用住宅の問題は、まさにそのことが問われている、ということになるのではないのか。