シリア内戦が続いてすでに2年が経過しているが、その中では幾つもの悲惨な状況が起こり、かつ残酷なことが行われてきていた。
しかし、つい最近シリアで起こった出来事は、世界中の人々を凍りつかせたのではないか。それは、アシリア軍兵士の死体にナイフを突き立て、反政府側の戦闘員のリーダーが、心臓と肝臓を取り出して食う、というシーンが流されたことだ。
後にそれは心臓ではない肺臓だと言われもしたが、内臓のどの部位であるにしろ、それは極めて残酷な行為であることに変わりはない。
この心臓を食うシーンの主役は、アブ・サッカルという人物で、反政府の自由シリア軍の一部を構成する、ファルーク旅団に属している、リーダーだということだ。彼の顔が明確に映っていることや、指輪などでアブ・サッカルに間違いがないことが、多くの証言で明らかになっている。
このファルーク旅団はホムス防衛のために、結成された旅団であり、現在2万人の戦闘員を要しているということだ。つまり、自由シリア軍のなかでも、大きな位置を占めている旅団だということだ。
このニュースが世界中で、大反響を呼んだことは当然なのだが、なぜこのような映像が流されたのであろうか。そして、そのことはシリア問題の今後に、どのような影響を与えるのであろうか。
数週間前には、反政府側が化学兵器を使用した、ということが国連の調査機関によって発表された。その後、アメリカやトルコは反政府ではなく、シリア政府側が使用したのだ、と主張してはいるが。
化学兵器の使用、そして今回の心臓を食う男の映像は、どう考えても反政府側がまともな組織ではない、というイメージを世界に伝えたのではないか。これまで反政府側は、アサド大統領の圧政に反発して立ち上がった、シリア国民の抵抗運動というイメージが、西側諸国ではもっぱら報道されてきたし、それを支援するサウジアラビアやカタール、トルコといった国々は、正義の側に立つというイメージであった。
今回の反政府にとって不都合な、二つの出来事はなぜ起こったのであろうか。このことによって、アメリカとロシアが合意した、シリア内戦の平和的解決をめぐる、ジュネーブ会議での反政府側の立場は、苦しいものになるのではないか。
うがった見方をすれば、今回の二つの不祥事が起こったことにより、シリア政府と反政府側とは、ほぼ対等な立場で、和平会議に参加することができるように、なったのかもしれない。