6月14日に予定されている、イランの大統領選挙は、すでに熱さを増してきている。何といっても驚かされるのは、イランの最高権威者であるハメネイ氏に対する、明らかな挑戦者が、二人立候補していることだろう。
一人は元大統領のラフサンジャニ候補で、彼は宗教学の権威でもある。彼はアヤトラというイスラム法学のトップの実力を持ち、ハメネイ氏と並ぶのだが、ハメネイ氏のアヤトラ学位は、故ホメイニ師によって与えられたものであり、しかるべき正規の課程を経て、得たものではない。したがって、これまで陰でハメネイ氏のアヤトラ位を、あざ笑う者が少なくなかった。
その一人がラフサンジャニ師であるが、彼が大統領に立候補したことは、同氏が大統領職を降りるに至った段階での、ハメネイ氏による敵対行動があったことに対する、仕返しとも取れないことはない。
現段階でのラフサンジャニ師に対する、世俗派、民主改革派の支持は、相当高いということもあろう。したがって、ハメネイ師はなんとか彼の立候補を、阻止しようと工作するであろう。
もう一人のハメネイ師にとって不愉快な候補者は、アハマドネジャド大統領の後継と目されているマシャエイ氏だ。彼の人気もそれなりにある。しかし、最近になってマシャエイ氏の立候補は、最終的に駄目になるのではないか、という風評が出始めている。
それは、アハマドネジャド大統領がマシャエイ氏の、立候補届け出に付き添って行ったことに起因する。そのことは、現職の大統領が立場を利用して、候補者の立場を有利にするものであり、選挙法に抵触するということらしい。
そればかりではない。アハマドネジャド大統領が公金を、マシャエイ氏の選挙資金に流用している、という噂も問題化している。それが事実であるか否かは別に、問題が大きくなるに従い、マシャエイ氏の立場は不利になろう。
加えて、アハマドネジャド大統領のマシャエイ氏付き添い問題が昂じて、イラン議会では彼が法律を犯したのだから、公開で鞭打ち刑に処するべきだ、という意見が高まってきている。
鞭打ち刑とは、上半身を裸にしうつぶせにさせ、背中を鞭で打つものであり、今回のアハマドネジャド大統領の罪が確定すれば、74回の鞭打ち刑に処せられるということだ。当然鞭打たれれば背中の皮が破れ、流血の事態になるということであろうし、そのような罪を犯した者は、大統領職に留まるべきではないということも言われるようになろう。
残るジャリーリ氏については、今のところ問題になっていない。ハメネイ師は彼を当選させたいのであろうが、国民の支持はどうだろうか。