イランの大統領選挙には、ラフサンジャニ、マシャエイ、ジャリーリ氏らの激突だろうと書いた。多分、展開はそうなるであろうが、その前にこの選挙に向けた、いろいろな動きがイラン国内で始まっている。
第一には、ラフサンジャニ師を世俗派というか、民主化派が支援することを、既に公表したのだ。そのことは、これまで抑え込まれてきた民主化派が、唯一の民主化への希望の糸口として、ラフサンジャニ師に賭けたということであろう。
ラフサンジャニ師の娘は、民主化運動で逮捕され、投獄された経験を持っていること。ラフサンジャニ師が現実主義者であることが、民主化派をして支持する気に、させたのであろう。
もちろん、ラフサンジャニ師がベラヤト・ファギの原理原則(イスラム法学者による統治)から外れることはないかもしれないが、他の候補に比べれば、より民主化する可能性が高いことと、ハメネイ氏が彼に対して反対はしないだろう、という読みに基づくものだろう。
ところが、ここにきてハメネイ氏が、ラフサンジャニ師の立候補を、抑え込むのではないかという憶測が、聞こえ始めている。その場合の唯一の口実は、すでに書いたとおり、ラフサンジャニ師の78歳という年齢を、上げるのではないだろうか。
イラン国家最高安全保障会議の代表である、ジャリーリ氏については、5月半ばにトルコのイスタンブールで行われる、EU外交委員長のアシュトン女史との、会談が用意された。これは多分に選挙を前にして、ジャリーリ氏を持ち上げるためのものではないか、と思われる。
しかし、それは両刃の剣でもあろう。この会談が成功しなければ、彼は間もなく実施される選挙で、不利な立場に立たされるのではないのか。核問題や安全保障問題で、ジャリーリ氏がアシュトン女史に示せる、新たなイランの立場というのは、それほどあるとは思えないからだ。
マシャエイ氏については、具体的な動きが今のところ見えてこない。それもまた、選挙に向けた計算された、動きなのかもしれない。しかし、マシャエイ師が有力な候補であることは、マスコミの彼に対する、取り上げ方からも想像がつく。もちろん選挙はどこの国でも、投票箱の蓋を開けてみなければ、分からないのだが。