イランで近く大統領選挙が実施されるが、この選挙に立候補届け出をした候補者数は、400人にのぼるということだ。もちろん、最終的には候補者の資格審査が行われ、多くが選挙戦を戦わずに、引き下がることになるのだが。
大統領立候補届け出の最後のぎりぎりで、立候補したのがラフサンジャニ師だ。彼は保守派の代表格であろう。述べるまでも無く、彼は元イラン大統領を勤めた人物である。
もう一人は、アハマド・ネジャド大統領に近いというよりも、後継者と目されているマシャエイ師だ。そして、ハメネイ師の支援を受けるであろう、イランの核交渉最高責任者のジャリーリ氏だ。
ここで気になるのは、ラフサンジャニ師とハメネイ師との関係だ。両者ともに宗教界の大御所であり、ほぼ同じ路線をとっているのだが、両者の意見は必ずしも同じではない。
従って、ハメネイ師はジャリーリ氏を、当選させようと躍起になろう。それで具体的にどのような邪魔を、ラフサンジャニ師に対して行うかだ。問題は年齢ではないか。ラフサンジャニ師は78歳であり、他の大物候補者に比べ20歳も高齢である点だ。
ラフサンジャニ師は過去4年ほど、改革派を支持する発言を、繰り返してきていた。政治犯の釈放も働きかけている。そして彼は経済に明るいという点が、イラン国民の支持を集めるかもしれない。
ラフサンジャニ師の欧米との、地下水脈も無視できまい。子息はイギリス在住であり、イギリスとのパイプはあるということだし、娘は民主化運動家で投獄経験もしている。彼女はサウジ王家と深い関係にあるが、それはアメリカと気脈を、通じているということであろう。
ハメネイ師は今度の選挙で、自分の立場を守るために、立候補者たちに対して、強硬に関与をするのか、あるいは自由選挙をさせるのか、注目されるところだ。あまり醜い関与をすれば、それは国民の反発を買い、ハメネイ師が支持する候補ではない候補者たちにとって、有利に働くかもしれない。
最近になって、イラン国民の間では、アメリカとの関係が急速に改善される、という期待感が広がっているらしい。それは述べるまでも無く、これまでのようにアメリカとの、敵対的な立場を採るのではなく、アメリカとの関係、西側諸国との関係を重視する、新大統領が誕生するという前提であろう。その人物がラフサンジャニ師なのか、あるいはマシャエイ氏なのか、あるいはジャリーリ氏なのかが、間も無く明らかになるということだ。