シリア問題への対応をめぐって、対立を続けてきたアメリカとロシアが、やっと一定の合意にたどりついたようだ。それは国際会議を開いて、平和的にシリア内戦を終息させる、というものだ。
他方、これと時を同じくしてトルコのダウトール外相が、意味深長な発言をしている。彼によれば、シリアのバニヤースで起こった、シリア軍による住民虐殺は、民族浄化であり、許されることではないということになる。
つまり、地中海東岸に並ぶタルトース、ラタキア、バニヤースなどを含む地域を、アサド大統領と同じ民族の、アラウイ派の国民のためのエリア(アラウイ国家)にする、計画に沿ったものだというのだ。
以前にも書いたが、シリアの地中海沿岸地域にはかつて、アラウイ派のための国家が存在していた。その復活ということであろう。そこまでアサド大統領は、危険に追い込まれており、生き残りの作戦を展開し始めている、ということであろうか。
そもそも、アサド大統領はこれまで3つの段階の、民族浄化作戦を展開してきた、とダウトール外相は主張している。それは、第一段階としてスンニー派の居住する地域に対し、シリア政府の結成したシャビーバというミリシア組織を使って、平和的なデモ隊を狙撃させ、第二段階では大量殺戮作戦を展開し、第三段階では軍用機による空爆を展開し、現在は第四段階として、スカッド・ミサイル攻撃を始めたというのだ。
アサド大統領はスンニー派の多く居住する地域を、このように攻撃して大量の難民を、生む結果となっている。シリアの中に出来るであろう、アラウイ派地区とレバノンが繋がるために、特にこの地域の住民に対する攻撃がひどかったため、現在ではレバノンに100万人を超えるシリア難民が、流れ込んでいるということだ。
ダウトール外相によれば、アレッポに対する外人部隊を使っての攻撃も、その目的とするところは、アレッポとレバノンを結ぶ、回廊を確保するためだと主張している。
トルコとPKKとの間に成立した合意も、PKKを北シリア解放に使うためであり、その合意はPKKクルドにとってもトルコにとっても、好都合なものだ。PKKの支援によりシリアのクルド人が、北シリアの一部を確保し、イラク北部のクルド地区と一体となるということであり、それは将来できるであろう、クルド国家の領土となるということであろう。
アメリカとロシアがやっとたどり着いた合意の裏には、双方の利益を守りあう、シリア分割案があってのことであろう。アラウイ地区がアラウイ国家になり、シリアから分離することになれば、ロシアは確実にタルトースという、ロシアにとって唯一の地中海に面する軍港を、確保維持できるし、アメリカはアメリカで、それ以外のシリアの地域を、コントロールすることが、できるからだ。