『トルコの原発受注と今後の課題』

2013年5月 7日

 安倍総理のトルコ訪問で、正式に日本がトルコの原発を建設することが、決定したようだ。それは、今後のトルコと日本との関係を考えた上で、大きな意味があろう。原発は3年や5年で廃棄になるようなものではなく、3050年と長期にわたるものだからだ。

 エルドアン首相も安倍総理も、互いにこの契約で一蓮托生というか、戦略的パートナーになった、と自覚したのではないか。今回の原発受注については、中国や韓国もだいぶ本腰を入れていただけに、今後これらの国々の動きも、考慮しなければなるまい。

 もう一つ考慮しなければならないのは、今回の日本の出した援助が、中国の半分であったことだ。したがって、それでも日本から受注したということでは、国民に説得できまい。そのためエルドアン首相は、それ以外の案件で日本の援助を、求めてくるものと思われる。

 それらの計画は、イスタンブールに大空港を建設する計画であり、人工ボスポラス海峡の建設であり、ボスポラス第3橋の建設だ。そのいずれもが度肝を抜くような、大プロジェクトであり、両国が本腰で取り組むべきものであろう。

 エルドアン首相はそのことを、明確に口にしているということは、原発建設合意の後に、日本に対する付帯条件として、突きつけたということであろう。

 原発建設の合意がなされた後、トルコ人が気になることを口にした。それは『わが国では、NGOなどの動きが活発であり、反対運動が本格的に起こるようなことになれば、政府も考慮せざるを得なくなるかもしれない。』というものだった。

 加えて、今回の原発建設にはアメリカのウエスチングハウス社ではなく、フランスのアレバ社と組んだものだという点だ。述べるまでもなく、フランスはトルコのEU加盟に、強く反対し続けて来ている国だ。

 フランスはトルコが大嫌いであり、トルコのイメージを悪くすることなら、何でも出てくるという性格を持っている。今回の原発契約成立のあと、フランス政府はトルコによる、アルメニア人虐殺問題を取り上げている。

 フランスが裏から手を回し、反原発運動を活発化させることも、懸念しなければなるまい。もちろん、フランスもこの事業を成功させることによって、トルコにくさびを打ち込みたい、という意向もあろう。

一説によれば、今回原発が建設されるシノップは、保守的な街であり、革新的な反原発運動が、活発化する街ではないから、大丈夫だということらしいが、反原発の運動家たちの大半は、外部から集まるよそ者でもあろう。

 原発受注には、まだまだ難問が控えている、と考えるべきではないのか。