『ケリー国務長官のPAへの40億ドル援助』

2013年5月28日

 少し前に、イスラエル政府がヨルダン川西岸の住民を対象に、1500戸の住宅を建設する、と発表したことを伝えた。その建設場所はジェリコ(アル・アリーハ)の近くであり、ヨルダンと橋でつながれているあたりであろう。

 何故、イスラエルは経済難に悩んでいるなかで、パレスチナ人のための住宅を、建設する必要があるのか。当然それには裏がある、と考えるのが常識であろう。つまり、イスラエルは何らかの理由があり、パレスチナ人の住宅を、この場所に建設する必要が生じたのだ。

 もし、パレスチナ人がここに集まってくれば、そのなかの不穏分子の、ヨルダンへの追放は容易だ。パレスチナ人がここに引っ越してくれば、ヨルダン川西岸地区の彼らの土地は使われなくなり、二束三文で買い上げることができよう。

 つまり、イスラエルがジェリコのそばに、1500戸の住宅を建設するのは、パレスチナ人をヨルダン川西岸地区から、合法的に追い出すためではないのか。イスラエルはパレスチナ人に対し、この地域には工場が建設される予定であり、将来就職が容易になる、とも宣伝するだろう。

 同じように、どうしても常識では納得のいかないことがあった。それは中東を訪問していたケリー国務長官が、パレスチナ自治政府に対して、40億ドルの経済活性化支援をすることを、発表したのだ。

 40億ドルもの金がパレスチナ自治政府に渡れば、その半分は幹部が山分けし、残りが地域に投入されるだろう。この場合の投資の対象地域は、ヨルダン川西岸地区の一部の、都市であろうから、それはそれなりに経済効果を生み出そう。

 しかし、なぜアメリカはケリー国務長官をして、このことを語らせたのであろうか。うがった見方をすれば、アメリカはヨルダン川西岸地区を、大きく変化させるために、援助を決定したのではないか。

 オバマ大統領は軍隊を送りこまない、平和の実現に力を入れると語っているが、その対象はパレスチナ問題も含まれるのであろうか。そしてアメリカが突き付けた、この40億ドルの見返りに、アメリカは何をパレスチナア自治政府に、要求したのであろうか。

 考えるに、アメリカは前提条件なしの和平交渉再開を、マハムード・アッバース議長に要求したのであろう。これまでヨルダン川西岸地区への、イスラエル人の入植を止めることが、和平交渉再開の前提になっていた。それを覆すのが目的ではないのか。

 和平交渉がこの前提なしに進められれば、イスラエル側は和平交渉の裏で、どんどん入植地を拡大し、増やしていくであろう。そして、最終的に和平が合意される段階になったときには、ヨルダン川西岸地区の多くの部分が、イスラエル人の居住区になっている、ということではないのか。

 パレスチナ自治政府の幹部たちは、マハムード・アッバース議長とケリー国務長官との間で、どんなやりとりがあったのか、全く報告を受けていない、と口をそろえて語っている。そのことは公開できないような内容が、マハムード・アッバース議長とケリー国務長官との間で、話し合われたということではないのか。

 マハムード・アッバース議長に言いたい『君国売りたもう事なかれ、パレスチナに生まれし君なれば土地への愛も濃かろうに』しかし慾は全てを盲目にするのかも知れない。