『イラン南東部で起こった巨大地震の悲劇』

2013年4月17日

 イランの南東部にあるカシュ地域で、50年ぶりの巨大地震が起こった、というニュースが流れてきた。この地域の建物は、日干し煉瓦に少量のコンクリートを使用した程度で、造られたものであり、地震に対してはほとんど耐久力がなく、相当数の犠牲者が出ていると思われるのだが、いまだにその実態が、明らかになっていない。

 イランの隣国パキスタンでは、すでに40人以上の死者が出たことが、確認されている。湾岸諸国のアラブ首長国連邦でも、相当ビルが揺れたようだ。それはバベルの塔を想わせるものではないか。高くなれば高くなるほど、危険が増すからだ。

 さて、このカシュの地震だが、この地域の住民のほとんどが、バルーチ族の人たちであろう。バルーチ族はイラン南東部からパキスタン南西部に居住する民族だ。彼らはパキスタンから、分離独立したいと考えているし、イラン側のバルーチ族もその暁には、分離してバルーチ国家に入りたい、と思っているのであろう。

こうした事情を考えると、地理的にイランの首都テヘランからは、大分遠いこともあり、どの程度イラン政府が救援に力を入れるか、疑問がわいてくる。人道的な立場に立てば、人種や部族に関係なく、救援活動が行われるべきなのだが、理想と現実との間には、ギャップがあるのではないか。

 もうひとつの難問は、カシュ地域までの道路や空路はどうなっているのかということだ。道路はあろうが立派なものとは思えず、大型のトラックで高速で、支援物資を運ぶのは、困難なのではないか。

 それに加え、私は現地のことを知らないので、断定的な言い方はできないが、空港の施設があるのか疑問だ。結局は大型の軍用ヘリを使って、負傷者を大都市に移送し、治療を施すしか対応の術は、ないのではないか。

 食糧などはヘリで運ぶことができようし、飛行機で空中から落とすこともできよう。

 今回の巨大地震は、イランのベラヤトファギ体制が、どれだけイスラム的人道と、慈善を実行するのかの、試金石になるのではないか。