『エジプト軍がデモ隊虐待報道の裏は何か』

2013年4月13日

 

 エジプトの軍は今回のアラブの春革命劇の中で、極めて冷静に対応してきた、というのが一般的な評価だった。したがって、軍に対するエジプト国民の信頼は強く、最近になって、軍が国家を主導することを望む、という声も少なくない。

 そうしたなかで、突然イギリスのガーデアン紙が、エジプト軍のスキャンダル記事を掲載した。曰く『エジプト軍はデモ隊を拷問し殺害している。』というものだ。この記事には尾ひれが付けられ エジプトでも報道されることになるが、犠牲者の家族がそのことに対して、感情を爆発させるということになる。

 果たしてこの報道は、正しいのだろうか。もちろん、デモが激しくなり、軍も出動命令を受けていたのだから、軍とデモ隊との間には、多少の衝突はあったものと思われる。しかし、それは意図的な虐待や殺戮ではなく、偶発的に起こった可能性の方が、高いのではないか。

 エジプトでは革命時、庶民が軍人に花を渡すシーンや、軍人が子供を抱え上げるシーンが、頻繁にマスコミを通じて流されていたことも事実だ。エジプトの街中には、軍のポスターがところどころに貼られているが、それは軍人が小さな子を抱えている、というものだ。

 そのポスターが意味しているのは、エジプト軍は大衆と共にあり、国を守り、国民を守るということであろう。事実、モルシー大統領が最近になって、大衆デモを取り締まるよう、軍に出動を依頼したところ、守るのは外国の敵からであり、エジプト軍には銃口を国民に向ける意志はない、と答えたということだ。

 今回の『エジプト軍がデモ隊メンバーを虐殺した』という報道の裏には、何かがあると考えるべきであろう。それは外国が考えたのか、エジプト国内のある勢力が考えたのか。多分、国内の勢力ではないかと思われる。

 しかし、この陰謀は結果的に、失敗に終わるのではないか、と感じるのだがどうだろうか。陰謀をめぐらせたのは、世俗派の誰かであろう。軍が拷問スキャンダルで、窮地に陥れば軍は世俗派の支援を、必要とすると考えたのかもしれない。つまり、軍を決定的に反モルシーの側に立たせよう、と思ったのかもしれない。

 しかし、この問題の解決の鍵を握っているのは、モルシー大統領であり、ムスリム同胞団ではないのか。つまり、結果は軍とモルシー政権との分断ではなく、両者を結束の方向に、向かわせるかもしれない。