イランはエジプトの経済的苦境を知ってか、観光客をエジプトに送り出し始めた。普通ならそれは、エジプト国民から歓迎されるはずなのだが、今回はどうもそうではないようだ。国民がイラン観光客の訪問に、反対し始めたのだ。
そればかりか、カイロにあるイラン領事の自宅が、襲撃されるという事件が起こっている。もちろん、人的被害が出たわけではなく、あくまでも嫌がらせの示威行為程度であろうが。
以前、モルシー大統領率いる与党自由公正党(ムスリム同胞団)は、エジプトのシーア派の活動に対する規制を緩め、イランからの学者の訪問も許した。それは何を意味しているのか。
エジプト国民が、イラン人観光客の訪問に反対するのは、多分に政治的意味合いがある、と思っているからであろう。エジプトは、元はシーア派の多い国であった。エジプトのファーテマ朝は、シーア派だった。
エジプト国民が恐れるのは、イランのシーア派ベラヤト・ファギ政権に激励され、自由公正党(ムスリム同胞団)の政権も、イスラム原理色を、強めるのではないかということであろう。
もう一つエジプト国民が懸念するのは、エジプト国民のなかの、シーア派掘り起こしではないか。隠れシーア派がエジプトの中には、結構いると思われるからだ。それがイランのエジプトへの台頭で、元気になり、表面に出てきたとき、エジプト社会はますます複雑な様相を、呈するのではないか。
いずれにしろ、ほんのちょっとしたきっかけが、暴発に繋がる不安定さを、エジプトは沢山かかえている。モルシー大統領が、少しでも間違った政策を打ち出せば、即日にそれが社会に、影響を与えるということだ。