『イランの貨物積載船をエジプトが拿捕し取り調べ』

2013年4月 5日

 イランとエジプトの関係が改善されている、というニュースは幾つも流れている。エジプトのモルシー大統領が就任早々、イランを訪問しているし、最近ではエジプトとイランとの間で、空路が開かれもした。

 こうした流れに合わせて、イランからは観光客がエジプトを訪れているが、これはエジプトの観光産業が、いま瀕死の状態にあるということを見て、イラン側が政治的に送ったのではないか、と思えるふしもある。

 先日、イランの貨物船がスエズ運河を通過する、という情報が流れ,これにエジプト側はどう対応するのか、世界から関心が寄せられていた。

それは、イラン船の積荷が武器だ、という情報があったからだ。その積荷はシリア政府側に渡されるものだろう、という推測もあったからだ。

 結果的に、エジプト政府はこの貨物船を拿捕し、乗組員を取り調べている。積み荷は当初の予想通り、45トンにも及ぶ大量の武器だったようだ。

 この貨物船は当然のことながら、民間の貨物船であり、イラン政府の所有ではない。民間の貨物船会社が荷物を、何処に運ぼうが自由なのだが、積み荷が武器とあっては、そう簡単でもあるまい。

 しかも、この貨物船は海賊が頻繁に出没する、紅海を通過してくるのだ。その途上、ソマリア人の海賊に武器の一部を、渡したのであろうか。この貨物船はジブチの港に、立ち寄っているのだ。そうすることによって、貨物船が海賊に襲われないように、手を打ったのかもしれない。

 問題の貨物船は、エジプトのサファガ港に誘導され、そこで取り調べが始まったようだ。しかし、取り調べの段階で積荷の武器が、シリアに送られることが分ったとしても、どういう口実でそれを没収することが、出来るのだろうか。

 シリアのアサド体制と、エジプトのムスリム同胞団政府は、シリアの反体制側支持であり、双方の関係は敵対同士であり、反政府側に武器が届くのであれば、エジプト政府は邪魔しないだろうが、シリア政府側に届くのでは、感情的にも邪魔したくなるだろう。

 この武器輸送への対応をめぐっては、エジプト政府とアメリカ政府との関係にも、影響があろう。エジプトが財政難のなかで、IMFから資金を借り入れるにしろ、アメリカ政府から直接的に援助を受けるにしろ、アメリカを喜ばすような何かが、必要であったろう。従って、エジプト政府は今回の貨物船をめぐる対応で、何の抵抗も無く、それが出来たということではないのか。