シリアのアサド政権が危機に頻して、既に相当の時間が経過している。それにもかかわらず、アサド体制がいまだに、打倒されないのはなぜだろうか。エジプトのムバーラク体制や、リビアのカダフィ体制が打倒されたにも関わらず。
それは、シリアの国民構成が極めて複雑であることに、起因しているのではないか。まず、アサド大統領出身のアラウイ派国民が、15パーセント程度いることに加え、キリスト教徒もいるのだ。
そのことに加え、アサド大統領父親の時代からの、多数派のスンニー派の人たちを、権力中枢に置いてきたということだ。このため、アサド体制は簡単には崩れない構造に、なっているのだ。
今回のアサド打倒劇が、なかなか終焉を迎えないのには、イランロシアといった、外国のシリアとの関わりもある。イランにとって、シリアはイランが中東地域で、影響力を拡大していく橋頭堡であり、この国の体制が打倒されれば、レバノンのヘズブラは干上がり、イスラエルに対するイランの圧力も、弱まってしまうということになる。
従って、イランは何としても、アサド体制を守り通したいと考え、イラク経由で兵器を送ったり、スエズ運河経由で送ったりしている。その結果、アサド体制は何とか、持ちこたえているのであろう。
他方、反アサド側も世界中からテロリストが集まっており、彼らに対してカタールやサウジアラビアが、武器、兵器、資金を提供している。最近では東ヨーロッパから、大型兵器(ミサイルなど)が届けられたという情報があるが、これでは内紛というより、本格的な戦争であろう。
ただ、反政府側に最近になって、亀裂が生じ始めていることが気になる。シリア人がムスリム同胞系と、非ムスリム同胞団系に分かれ、それ以外にも世俗派もいる。これに外国の原理主義者グループが、幾つも入り込んでいるというのが実情だ。
こうなると、反シリア体制派を一つに纏めることは、ほとんど不可能であろうし、もし統一してアサド体制を打倒しても、その後の混乱がいまのうちから予想される。これまで反体制派が、なかなか統一した立場を打ち出せなかったのは、こうした理由からだ。
従って、イランはいまでもアサド体制は、生き残れると考えているのだ。もしそれが不可能になった場合は、アラウイ派やキリスト教徒が多く住む、東地中海沿岸部にアラウイ国家を創ることであろう。それはタルトース港を軍港として維持したい、ロシアの賛同を得ることもできよう。