パレスチナ自治政府の首相職にあった、ファッヤード氏が辞任することになった。しかし、実際はどうなっているのかは、不明な部分もある。それはファッヤード氏に対する、西側諸国の信頼問題が、絡んでいるからだ。
マハムード・アッバース議長は彼の辞任を、思いとどまらせたい部分と、早急に辞めさせたい部分とがあるようだ。それは、そもそものマハムード・アッバース議長と、ファッヤード首相との争いが、ナビール・カシース財相の辞任に、絡んだものだからだ。ファッヤード首相が彼を首にしたことから、マハムード・アッバース議長は腹をたてたことで、今回の対立は始まっている。
推測の域を出ないが、ナビール・カシース財相が、マハムード・アッバース議長の命令で、勝手にPAの資金を動かしたことに、原因があるのではないかと思われる。公金と個人の金の区別が、不明瞭なのがPAの悪い点だが、そのことに原因があるのではないかと思われる。
ファッヤード首相の辞任劇には、もう一つの原因がある。それはハマースが彼の留任を、希望していなかったからだ。正当な選挙で選出された、本来であれば、イスマイル・ハニヤ氏がPAの首相に就任すべきものを、マハムード・アッバース議長とファタハが、ファッヤード氏を擁立して、首相職に就任させた、という経緯があるからだ。
その後、ガザにはイスマイル・ハニヤ首相、ヨルダン川西岸地区にはファッヤード首相という、二人の首相が存在するという、異常な形になってきていた。
マハムード・アッバース議長は自分が・すべてのパレスチナ人を代表する・と内外に言いたいがために・なんとかガザ地区の住民と・ハマースを取り入れようとしてきたが、ハマース側はファッヤード氏が首相に留任している間は・統合を受け付けないという、立場を堅持してきていた。
今回のファッヤード首相辞任劇は、したがって、マハムード・アッバース議長にとっては、好都合であったわけだ。だが、もう一つの問題があった。それはファッヤード氏が元IMF に勤務していた経緯があり、欧米諸国では信頼の厚い、人物だったことだ。
ファッヤード首相の辞任は、そのままPAに対する西側諸国に信頼が、ぐらつくということになるのだ。
いずれにせよ、ファッヤード首相の辞任は決定されているようで、それを実行するタイミングの、選択だけの問題のようだ。そして、ファッヤード氏の後釜になるのは、ムハンマド・ムスタファ元パレスチナ投資ファンドの会長のようだ。
私に記憶が正しければ、この人物はかつてアラファト議長の裏金を、運用していた人物であり、アラファト議長は彼の名義で、イスラエルのバンクハポリアに、口座を持っていたことがある。つまり、就任早々にでも、煙が上がる可能性のある、人物だということだ。