フランスの右翼政党として知られる、ナショナル・フロントの党首マリーネ・ル・ペン女史が『何故トルコはEUに加盟したがるのか。』とトルコのジハーン通信社とのインタビューで語っている。
同女史に言わせれば、EU 諸国は借金だらけであり、その借金国を支えるために、比較的経済に余裕のある国も、四苦八苦している。そんな中にトルコが入って、何のメリットがあるのか、ということであろう。
マリーネ・ル・ペン女史はシリアへの反体制側への支援も、ギリシャなどへの資金協力も、したくない考えのようだ。彼女はトルコはリビアやシリアの過激派に対して、支援を送るべきではない、と語っている。
私は8年ほど前であろうか、トルコのイズミール市で講演を依頼され、その冒頭で『トルコはEUに加盟するな,オスマン帝国の末裔がEUに加盟して、二等市民になって何の得があるのか、恥を知れ。』といった内容のことを、訴えたことがある。
その会場では私の発言は、大受けに受けた。トルコ人の心のなかにも、そうした気持ちはあったのであろう。しかし、他方でトルコ政府は執拗ともいえる形で、EUに対し加盟を、要求してきている。
トルコのEU加盟は、現在なお実現していないが、結果的にはそれが、大きくトルコ経済の発展に寄与している。もし、EUに加盟が許されて、EUの加盟国となっていたら、トルコは自由に対ドルレートを変えることが、出来なかったことは明らかであり、結果的に、現在のような経済発展は、遂げられなかったはずだ。
最近になって、ダウトール外相などが『ルック・イースト』の発言をし始め、必ずしもEUに加盟することを、望んではいないと言い始めている。
トルコは現在、EUに加盟しなくても十分に、中央アジア諸国やアラブ諸国、アフリカ諸国を相手に、経済活動を進めていける状態にある。
マリーネ・ル・ペン女史が語った『トルコはなぜEUに加盟したいのか?』は既に古びたセリフではないのか。
古い情報を元に、トルコに批判的な意見を吐く、フランスの政治家のセリフは、トルコ人たちによって心のなかで、笑われているのではないだろうか。
もし、いまでもEUに加盟したい、と考えているトルコ人がいるとすれば(実際にいるのだが)彼らはヨーロッパに対するコンプレックス保持者か、トルコ政治にヨーロッパを取り込むことによって、自分たちの立場を強化したいと考えている、マイノリテイの人たちであろう。